2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2013年3月5日

 また、ソチはテロリストが多く暗躍する不安定な北コーカサス地域に位置し、2008年に軍事衝突したグルジアやグルジアの未承認国家であるアブハジアとも近いことから、テロ対策も重要な課題となっている。

強まる政治色
プーチンの肝いりプロジェクト

 ソチ五輪は、プーチン大統領の肝いりプロジェクトという要素も強い。かつて筆者が拙著(『強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」』 光文社新書、2008年)で述べたように、プーチンはソチ五輪の誘致に全身全霊で取り組み、最終投票が行われた2007年7月4日にグアテマラのグアテマラシティで開催された第119次IOC総会に自ら乗り込んで、当初劣勢だったにもかかわらず、最終的にソチでの開催を導いた。

 当時、プーチンは任期切れで大統領を退くことが決まっていたが、筆者は、大統領ポストから一期退いて首相として4年間過ごした後、再び大統領に返り咲いて、ソチ五輪の際には大統領として存在感をより大きくしようとしているに違いないと考えていた。そして、そのシナリオが、まさに現実のものになろうとしている。

 プーチンは、首相時代にもソチ五輪に政治色をつけ、批判や疑問を呼び起こした。大会マスコットは、テレビ番組を通じた一般市民の投票により、ヒョウ、野ウサギ、ホッキョクグマに決まったのだが、当時首相だったプーチンが直前にヒョウを推していたのだ。なお、件のホッキョクグマは、1980年モスクワ五輪のマスコットだった小熊のミーシャをデザインした絵本作家から盗作と批判されたというエピソードもある。

遅れる会場建設への懸念

 こうして、会場整備が必死に行われているが、なかなか思い通りにはいっていないようである。

 2月5日には、陸上女子棒高跳びの世界記録保持者、エレーナ・イシンバエワが村長を務めるメインの選手村の一部が報道関係者に公開された。建物はまだ建設中だが、室内の床はフローリングで、選手がくつろげるよう、かなりゆったりしたスペースも確保されているという。また、6日からは各国・各地域の代表約200人がソチに集い、団長会議が行われたが、その際の会場視察では、会場間の近さなどが高く評価された。

 他方、建設の遅れは深刻な問題となっている。五輪関係の計349施設のうち49施設で建設が遅れているともいわれる。


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