たとえば、五輪のテスト大会を兼ねて7日からソチで行われたフィギュアスケートのグランプリファイナルの公式練習が始まった。だが、初日から多くの混乱が生じた。たとえば、ジュニアの日本選手団が乗ったバスが渋滞に巻き込まれ、宿舎から30分程度で到着するはずの会場まで、1時間半近くかかった。道の整備が済んでいない他、あちこち工事中で通行止めなどが多かったためだといわれる。ロシアの有名なフィギュアのコーチであるタラソワ氏も警察に電話で抗議し、警察車両が出動して選手団のバスを先導する事態になった。本番会場を利用したテスト大会は様々な種目で行われているが、選手達にも不安が募っている。
また、テスト大会では雪問題も深刻な課題として浮上した。これは過ごしやすいソチの温暖さの諸刃の剣だ。ソチは2月でも15度くらいまで気温が上がることもあり、雪が溶けてしまったり、雪質が良い状態で保持できなかったりという問題を生じたのだ。これには関係者も頭を抱えたが、2月13日にIOC理事会で、キリー調整委員長は、来期のために雪をためる計画を進めており、たとえ気温が上がっても大丈夫な環境整備に努めると述べた。
ささやかれる汚職や様々な疑念
そして、ソチの建設事業が大規模に進む中、プーチンが2007年に1兆5000億円規模とした準備予算が跳ね上がり、2月4日には、コザク副首相が民間投資を含む開催費などの総額が約4兆6千億円に達したと述べた。2008年の北京五輪の総費用は約3兆7千億円だったとされる中、五輪史上最高額であることが喧伝されるが、一方でこの高額な費用への疑問がロシア国内で浮上している。
その背景には汚職・腐敗があるという声が強く聞かれる。プーチンも2月6日にソチの会場を視察し、費用の規模が拡大していることについて、資材などの値上がりを口実に資金などを盗むことがあってはならないと強調し、大統領自身が業者や役人による横領など腐敗があることを暗に認めた。
さらに、2月7日には、コザク副首相が、競技施設の建設遅延と経費増加を理由に、ロシア五輪委員会のアフメト・ビラロフ副会長の解任を発表した。これにより、ビラロフは競技施設の建設を請け負った国営企業代表の地位も喪失した。実は、その前日に現地視察をしたプーチンが、ビラロフが代表を務める企業が担当したスキーのジャンプ施設の建設に当初予算の6倍以上の費用(248億円)がかかり、2011年6月に予定された引き渡しが今年7月にまでずれ込むと想定されており、工期も守られなかったことを強く批判していた。その翌日の解任劇である。
このような、五輪委員会の幹部解任は異例であり、予算膨張と工期の遅れに対するプーチンの強い苛立ちと懸念の強さが感じられる。