加えて、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、2月6日に、五輪関係施設建設のために旧ソ連各地からやってきた出稼ぎ労働者が時給170~250円程度の低賃金で、かつ劣悪な労働条件(例えば、毎日12時間労働で、休日は2週間に1度しかない、宿舎として民家1軒に200人近くが押し込まれる、など)で働かされている状況を報告した。
このように、ソチでは多くの問題が懸念されているのである。
マフィアの抗争も激化
そして、ソチ五輪の背後にあるマフィアの抗争もロシアでは話題となっている。1月16日には、マフィアの大物であるアスラン・ウソヤンが殺害されたが、彼が首都モスクワやソチを含む、広大な縄張りを持っていたため、ソチ五輪との関係がささやかれているのだ。
ウソヤンはソチを第二の故郷と言い、強い愛着と支配力を持っていたという。ソチの多くの土地、ホテル、レストラン、レジャー施設はウソヤンの所有物だったようだ。ソチが五輪開催地に決まってから、同地における犯罪組織の影響力が飛躍的に増大したと言われおり、マフィア間の殺傷事件も激増した。例えば、2010年には、ウソヤンのソチにおける腹心の部下であったエドワルド・カコシャンが射殺されている。カコシャンは犯罪世界でソチの知事ないし、裏政府のような存在だったと言われる。
そして、ウソヤン射殺後は、裏社会の秩序が乱れ、暗殺事件や逮捕が激増している。特に、ウソヤン射殺を指令したと噂されるアゼルバイジャン系のロフシャン・ジャニエフに関するものが圧倒的で、例えば彼の腹心も1月20日にアブハジアで殺害され、ジャニエフ自身もアゼルバイジャンで逮捕された。また、別の有力マフィア数人も殺害されている。これらのことは、マフィア間の抗争が熱を帯びる一方、旧ソ連の治安機関がその火消しに躍起になっている証左と言えるだろう。
懸念されるテロ
ソチの安全を死守したいプーチン
前述のように、ソチ五輪ではテロ対策も重要だ。日本ではあまり報じられていないが、ソチやソチ近郊ではテロ事件も頻繁に発生している。今年の1月の段階でも、600人の武装勢力が同地域に潜伏、活動していると内務省幹部が発表しており、当局はその取り締まりに追われている。