2022年11月30日(水)

スポーツ名著から読む現代史

2022年4月7日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

人種差別との戦いとタイガー・ウッズの功績

 ディキシーランドといわれる南部諸州の中心地にあるオーガスタでは、「黒人は白人に仕える」という風習が当たり前とされてきた。ゴルフは「白人のスポーツ」であり、ゴルフにおける黒人の役割はキャディーだった。

 米プロゴルフ協会(PGA)は43年、規約第3条1項に「メンバーは南北アメリカ在住の18歳以上の白色人種のプロゴルファーであること」という条項を追加していた。この条項は62年に撤廃されるのだが、オーガスタ・ナショナルは当然のように「白人ゴルファー」のためのクラブだった。

 全米に広がる人種差別撤廃の動きの中、オーガスタ・ナショナルもわずかずつではあったが黒人受け入れへとかじを切った。75年のマスターズには、前年のツアーで優勝したリー・エルダーが黒人ゴルファーとして初めてマスターズに招待された。以後、毎年のように黒人ゴルファーが招待されるようになった。

 参加選手だけではない。90年にはオーガスタ・ナショナルのメンバー会員に黒人実業家が加わることになり、黒人への門戸開放は進んだ。

タイガー・ウッズ(左)の〝復活劇〟も松山英樹の活躍とともに期待される(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「ゴルフは白人のスポーツ」というイメージにとどめを刺したのがタイガー・ウッズの出現だった。95年のマスターズに全米アマチュアチャンピオンとして招待されたのが19歳の大学生、ウッズだった。2年後、全米アマ3連覇を達成したウッズは、初めてプロとしてマスターズに参戦し、コースレコードの18アンダーで優勝した。21歳3カ月での優勝も史上最年少記録だった。

 ウッズはこの後、20年余にわたって世界中を魅了するプレーを披露。メジャー大会の優勝はマスターズの5回を含め15回に達した。

 ゴルフ場を離れても、さまざまな話題を提供することになるウッズだが、2019年のマスターズでの「奇跡の復活」を含め、オーガスタ・ナショナルGCを舞台にしたウッズのプレーの数々が「ゴルフ史に残る名場面」として世界中のゴルフファンの記憶に深く刻み込まれているのは間違いない。

 ユーバンクスは『オーガスタ』のエピローグでマスターズの将来にふれ、「近いうちに、アジア人のマスターズ優勝者が出るだろう」と予言した。それから24年後、ユーバンクスの予言を現実のものにしたアジア人が松山英樹だった。日本人として誇らしい気持ちにさせてもらったことに感謝しなければなるまい。

 今後、マスターズがどんな名勝負を見せてくれるのか。球聖ジョーンズの遺産にこれからも熱い視線を送っていきたい。(文中敬称略)

  
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