2022年9月29日(木)

スポーツ名著から読む現代史

2022年4月7日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

 男子ゴルフのメジャー大会、マスターズ・トーナメントが7日、米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCで開幕する。昨年は松山英樹が日本人として初めて優勝し、日本中を歓喜の渦に包んだ。

 全英オープン、全米オープン、全米プロ選手権とともにメジャー4大会に数えられるマスターズは、「球聖」として知られるボビー・ジョーンズ(1902~1971年)が創設した大会で、他のメジャー大会が毎年会場を変えるのと違い、オーガスタ・ナショナルGCで毎年開催されている。美しい景観と、巧みに配置された18ホールは世界中のゴルファーの聖地ともいえる。

連覇に向けて練習ラウンドで調整する松山英樹(ロイター/アフロ)

 4大大会の中で一番歴史の浅い大会でありながら、「達人」を意味するマスターズの優勝者は、ゴルフ界最高峰の栄誉とされている。今年の大会で松山の連覇はあるのか、また、昨年2月、交通事故で瀕死の大けがをしたタイガー・ウッズ(米国)の復活があるのかなど見どころは多い。

 米国の元プロゴルファーで小説家でもあるスティーブ・ユーバンクスが『オーガスタ 知られざるマスターズの素顔』(ベースボールマガジン社 、赤野間征盛訳)を出版したのは、マスターズ史上初めて黒人選手のウッズが優勝した1997年だ。そもそも、球聖ジョーンズは、どんな狙いでオーガスタ・ナショナルのコースを作り、大会を始めたのか。いかにして世界中のゴルファーがあこがれる最高峰の大会となったのか。マスターズの歩んできた道を、同書を通じて振り返ってみたい。

ジョーンズの輝かしい経歴と引き際

『オーガスタ 知られざるマスターズの素顔』(ベースボールマガジン社 、赤野間征盛訳)

 ロバート・タイアー・ジョーンズ・ジュニア(ボビー・ジョーンズ)は1902年3月17日、ジョージア州アトランタで生まれた。幼児期には消化器官が弱く、医師からは「この子は5歳まで生きられないだろう」と言われたが、乳母と母親の手厚い看護で無事成長した。5歳半になって初めて木製のクラブでゴルフボールを打ったのが始まりとされる。

 成長するにつれゴルフの腕前は上達し、1920年から30年にかけての10年間に、ジョーンズは45の大会に出場し、21回優勝し、7回2位になった。このうち、当時のメジャー大会である全米オープン、全米アマ、全英オープン、全英アマの4大大会に通算13回優勝。とりわけ30年には4大会とも優勝する「グランドスラム」を達成した。

 ジョーンズの本業は弁護士で、プロも参加する全米オープンなどの大会で優勝しても賞金は受け取っていない。グランドスラムを達成した30年、28歳の若さで現役を引退した。このことが「球聖」としてあがめられるきっかけにもなった。現役時代、どのコースに出てもレポーターやファンに取り囲まれ、気楽にゴルフを楽しめなくなっていたジョーンズは、仲間内と気楽にゴルフを楽しめるコースを作ろうと思い始め、自宅のあるアトランタ近郊で適地を探していた。

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