WEDGE REPORT

2021年4月13日

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(AP/AFLO)

 歴史的快挙に日本中が涙した。米男子ゴルフの海外メジャー初戦「マスターズ」の最終日は11日、米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCで行われ、松山英樹がアジア人初の優勝を果たした。「メジャー」と呼ばれる男子の4大大会を日本人選手として初めて制覇。4打差をつけて単独首位から出た最終ラウンドは苦しみながらも最後は1打差で逃げ切り、日本ゴルフ界の未来を切り開いた。

 やはり「メジャー」は簡単に勝たせてはくれない。あらためて痛感させられるようなマスターズ最終ラウンドの死闘だった。出だしの1番、松山はいきなり第1打を右の林に曲げてしまってボギーとし、2位につけていたマスターズ初出場のウィル・ザラトリス(米国)に1打差へと詰め寄られた。

 それでも以降は2連続バーディを決めるなど前半9ホールを終えると5打差にまで広げた。2打目を奥の池に入れた15番、16番と連続ボギーを叩いて2打差に迫られたものの終盤の2ホールでは冷静沈着な気構え、そして持ち前の修正力と勝負強さを存分に発揮した。

 最後は2メートル弱のパーパットを外したが、これに動じるような松山ではない。苦笑いを浮かべつつ次の一打で冷静にタップインさせ、見事なウィニングパットを決め歴史の扉をこじ開けた。最後は圧勝ムードが完全にかき消され、僅差でのV。しかし最終ラウンドでギリギリの死闘を繰り広げ、それを乗り越えてつかみ取ったからこそメジャータイトルの重みはやはり格別だった。

 2017年「WGCブリヂストン招待」以来となる4シーズンぶりのPGAツアー6勝目が、日本ゴルフ界にとっても前人未到のメジャータイトル戴冠となった。

 その快挙の瞬間、生放送したTBSの実況アナウンサーの声は震え、涙ながらに「ついに、ついに世界の頂点に松山が立ってくれました」と口にすると嗚咽する余りに1分弱も沈黙した。感想を求められた解説の中嶋常幸プロもすぐには声が出ず、間を置いたあとに涙声で「すみません。後半苦しかったから」と述べるのが精いっぱい。中嶋プロ自身も1986年大会で8位に輝いた実績があり、ついに〝壁〟を乗り越えてくれた松山の快挙には感情を抑え切れなかった様子だ。同じく日本のTBS局内の放送席にいた宮里優作プロも感極まっていた。

 このTBSの朝の生中継を見て思わずもらい泣きする人も、かなりの数でいたようだ。ただ、当の松山に涙はなかった。絶対に号泣するだろうと勝手に思い込んで注視していたが、栄光のグリーンジャケットに袖を通しても目に光るものはなく満面の笑み。小躍りするように両腕を突き上げ、グリーンジャケットセレモニーの優勝インタビューでも「サンキュー」を繰り返すちょっぴりチャーミングな姿でギャラリーの笑いを誘っていたほどだった。

 TBSの放送席とのやり取りでも興奮気味のアナウンサーと解説陣に対し、松山は冷静に落ち着いた口調で応えていた様子も印象的だった。

 「やっと日本人もできるとわかったと思う。僕もまだまだ頑張るので、みんなもメジャーを目指して頑張ってほしい」

 2017年の全米プロ選手権では最終日に1打差の2位でスタートしたものの通算5アンダーの5位に終わり、インタビューで「気持ちの部分も成長しないといけないし、自信を持って打てるような技術もない」と人目もはばからずに涙を流したこともあった。だが松山は悔し涙は流しても、嬉し泣きすることは自らの辞書にないのだろう。

 前出のコメントで「僕もまだまだ頑張る」と述べていたように歴史的快挙を成し遂げても向上心を忘れることなく、自分に対する厳しい姿勢を常に貫き続けるのは松山の真骨頂だ。2020年の全米オープンで17位に終わった時に自らの成長について「何も感じない」とバッサリ切り捨てたことも、松山らしい一面と言える。卓越したメンタルの強さを兼ね備え、悔しさや負けじ魂をバネに這い上がっていくスタイル――これが昨今の松山の原動力となっているのは言うまでもない。

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