久々に投打が噛み合った。巨人が11日の広島東洋カープ戦に9―0で快勝した。不振にあえいでいた主砲・岡本和真内野手が開幕15試合目にして先制の今季1号2ランを放つなど2安打3打点の大暴れ。4番の目覚めに触発されるように打線は13試合ぶりの2桁安打となる12安打9得点の猛爆で同一カード3連敗を回避した。
そして、光ったのは10年目左腕・今村信貴の快投。3年ぶりの完封勝利でチームに白星を呼び込んだ。今季は3試合で2勝0敗、防御率0・78と抜群の安定感をみせている。そんな左腕を好リードし続けているのが、登板3試合で先発マスクを被ってバッテリーを組んでいる正捕手の大城卓三だ。
昨季はチーム最多の85試合でマスクを被り、リーグ制覇に貢献。自身初のベストナインにも輝いた。今季も開幕から主戦捕手の座を任されている。しかしながら時折顔を覗かせる単調なリードについて有識者から酷評されるなど課題もまだみられる。特に昨年の日本シリーズで福岡ソフトバンクホークスに2年連続の4連敗を喫した際、随所で大城のリードに厳しい指摘が向けられ、やり玉に挙げられたのは記憶に新しいところだろう。
一方で大城の最大のセールスポイントとして評価されるのは「打てる捕手」であるという点だ。この11日の広島戦も3試合連続でクリーンアップの5番に座り、4打数2安打2打点。長きに渡ってチームを正捕手兼主砲として支え続け、黄金時代を築き上げた阿部慎之助二軍監督の現役時代を理想とし、そのレジェンドの存在に少しでも近づいてほしいという思いが大城に対して、原辰徳監督ら首脳陣の中にはやはりあるのかもしれない。
さて、大城が正捕手となっていることで窮地に立たされているのが小林誠司である。プロ8年目の31歳。12球団の中でも屈指の強肩で盗塁阻止率が非常に高く、エースの菅野智之や一昨年まで巨人に在籍していた山口俊からリードを高く評価され、2019年までは2人とコンビを組むことも多かった。ちなみに2018年には、その菅野、山口とバッテリーを組んだ試合で2人のノーヒットノーラン達成を導き〝サポート役〟として1シーズンに2度の快挙を成し遂げている。
そんな小林は今、二軍降格中だ。今季のG捕手陣は開幕メンバーに大城をメインに据え33歳・炭谷銀仁朗、そして小林と3人体制でスタートを切った。ところが今月7日に小林はあっさりと登録抹消され、打力に定評がある捕手・岸田行倫と入れ替わった。一部スポーツ紙には小林降格について元木大介ヘッドコーチが打撃力不足を理由として挙げるコメントが掲載されたが、一軍に残った炭谷とは打撃成績でほぼ遜色ないことから元木ヘッドの説明には各方面で疑問符が投げかけられたのも無理はない。
しかも、この7日の時点で小林はすべて途中出場ながら6試合でマスクを被っており、炭谷はわずか1試合にとどまっていた。同じ「打てない捕手」ならば、降格させるべきは炭谷ではないのか――と方々から言われるのも、当然と言えば当然であろう。
セ・リーグ球団のスコアラーの1人は「あくまでも個人的な見解」としながらも「卓越したリード面に加えて強肩も兼ね備えていることをストロングポイントとしてみれば、捕手・小林は今の巨人の中でトップ。彼がマスクを被らない分、対戦相手にとってはアドバンテージになっているところもある。それにもかかわらず、小林はまるで『毛嫌い』されるかのようにここまで使われないのは非常に不思議だ」と首をかしげている。
新型コロナウイルスの影響で約3カ月遅れの開幕となった昨季、小林は開幕3戦目に左手首に死球を受けるアクシデントで左尺骨を骨折し、長期離脱。しかも昨年10月の二軍公式戦ではワンバウンド投球を止めた際に今度は右手人差し指を骨折してしまい、負傷の影響から日本シリーズ出場が不可能となった。これに原監督が激怒し「野球選手じゃない」「職場放棄」などと小林を辛らつな言葉で猛批判したこともある。
「小林は捕手として誰もが認める能力の持ち主なのですが、その半面、首脳陣からは自己主張するタイプで謙虚さが足りないとみられているフシもあるようです。以前、球団に在籍していたチーム関係者の中からは『とてもまじめな選手でナイスガイなんだけど気難しい性格なところもあって、それが古株のベテラン選手や古参の首脳陣には何となく可愛げがないと映ってしまうのかもしれない』との指摘が出ていたことを思い出します。ただ、それは裏を返せば自らに自信を持ち、芯が強くブレない証拠と言えるわけで、ある意味において一流捕手としては必要な要素です。こうした本来の持ち味を今の巨人で十分に理解されていない小林は非常に不幸な立場に置かれていると言い切れるのではないでしょうか」(球団OB)
それでは、何かと小林に手厳しい原監督も「毛嫌い」しているのだろうか。さすがに、そんなことはないだろう。2019年シーズンのオフに小林は3年3億円(推定)の複数年契約を締結。この契約内容を強く押し進めたのは何を隠そう、全権監督として編成権も担う原監督だった。当時国内FA権を2020年シーズン中に取得可能な状況にあった小林の他球団流出を防ぐ意味においても、一気に4000万円も年俸を引き上げて異例の長期3年という複数年契約を提示。小林も大いに喜び、意気に感じていたという。