Wedge REPORT

2021年3月29日

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 プロ野球が開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大で142試合制の通常日程が組まれ、3月下旬に予定通りの開幕を迎えたのは2年ぶりだ。観客の人数や応援の仕方などに制限が設けられているとはいえ、今年も球春到来には多くの人たちが胸を躍らせ、熱い視線を送っている。

 28日はセ・パ12球団の開幕カード3連戦が終了。その3カードの中の東北楽天ゴールデンイーグルス対北海道日本ハムファイターズ戦(楽天生命パーク宮城)は27日の第2戦で先発予定だった今季最注目の楽天・田中将大投手が右ふくらはぎを痛めて登板回避となり、ガッカリした人も多かったはずだろう。しかし、両軍の手に汗握る攻防は開幕カードにふさわしく見応えがあった。

 開幕戦で楽天は昨季最多勝の涌井秀章が力投し、白星スタート。そして3戦目ではドラフト1位ルーキーの早川隆久が快投を見せ、2勝1敗として開幕カードを勝ち越した。負け越した日本ハムも一方的にやられたわけではなく2戦目で意地を見せ、今季初白星。その2戦目では高卒3年目の20歳・野村佑希内野手が勝ち越しの2点適時打を放つ活躍を果たした。

 楽天、日本ハムともに若い力の台頭が綺羅星の如く輝きを放ったのは、両軍ともに好材料だ。ところが本来なら、ここで敵同士となって相まみえ「若い力」として輝かなければいけないはずの2人が両軍それぞれの開幕一軍メンバーから外れ、この場にいなかった。今年でプロ6年目の23歳・楽天のオコエ瑠偉外野手、プロ4年目の21歳・日本ハムの清宮幸太郎内野手である。

(koyu/gettyimages)

 オコエはもうとにかく後がない。今年2月のキャンプは二軍スタートが決まっていたが、2月2日に左手関節の手術を受けることが球団側から発表され、キャンプ全休。復帰時期も未だ不透明のままだ。

 昨季はプロ入り後初の一軍出場なしで終わり、二軍のイースタン・リーグ公式戦でも27試合の出場で打率2割6分9厘、0本塁打、5打点、3盗塁とまるでパッとしない成績にとどまった。昨年末の契約更改後、報道陣からオコエに対するコメントを求められた石井一久GM兼監督は「考えが甘い。がんばってほしいというより、そろそろ出てこないと彼自身の野球人生が苦しくなる。ここが正念場。自己評価が高過ぎる」とバッサリ切り捨てている。指揮官から、ここまで言われる立場でありながら契約更改後のオコエが球団を通じて発したコメントは「来年、頑張ります!」の一言のみ。シンプルと評せば聞こえはいいかもしれないが、どこか能天気過ぎて危機感がまるでないようにも見受けられる。

 それから約1カ月後に手術発表でキャンプ全休となり、復帰時期も未定となってしまったのだから、おそらく石井監督をはじめとした首脳陣、そして球団幹部は誰もが呆れ返っているであろう。こうした背景からオコエに「トレード候補」あるいは「戦力外」の声がささやかれ始めているのも無理はあるまい。

 オコエは関東第一高校3年時に夏の甲子園に出場。聖地で旋風を巻き起こし、2015年のドラフトで1位指名された楽天に入団した。身体能力が高く、遠投で120メートルを計測するほどの強肩を誇り、50メートル5秒96の脚力も大きな武器。課題とされていた打撃は自身2年目の2017年シーズンから二軍打撃コーチに就任した栗原健太氏(現中日一軍打撃コーチ)にファームでみっちり指導を受け、そこそこ開花しかけたかと思われた。 

 同年のチームはクライマックスシリーズ(CS)進出を果たし、オコエも一軍メンバーとして出場している。CS後にはU-24日本代表として国際大会「第1回アジアプロ野球チャンピオンシップ」にも出場し、優勝を経験。だが同大会後に派遣されたメキシコのウインターリーグでは結果を出せず、試合出場の機会もなくなると「何もかも(参加前の想定と)違っていた」などと述べ、当初の予定を切り上げて帰国している。

 球団OBも「オコエはもういい加減、気付かなければいけないのであえて厳しいことを言わせてもらう」と前置きし、次のように苦言を呈す。

 「入寮時の高卒新人はどこの球団も学生服で来るのが通例だが、オコエはいきなり私服で現れて関係者や報道陣の度肝を抜いた。1年目の契約更改後、いきなり高級外車を購入し、DJ用ヘッドホンを首にぶらさげ、球場や練習場にやって来るなど一介の若手とは思えない行動が早々と目立つようになった。厳密に言えばどれも特に禁止されていることではないので、とやかく言われる筋合いはないかもしれない。

 だが監督、首脳陣や先輩選手らからは『まだロクに結果も残していないくせに態度だけは一人前なのか』と見られても仕方がないだろう。ちなみにオコエは中途半端な形で早期帰国したウインターリーグ参加の前年となる2016年もアジア・ウィンター・リーグにNPBイースタン・リーグ選抜の一員として参加したが、親知らずの悪化という周囲が納得し難い理由で途中帰国している。石井GM兼監督も同様の指摘をしているが、要するに彼は〝自己過大評価および自分勝手〟なところが著しい。それが天性の能力発揮を妨げ、現在の低迷を招いているのだと思う」

 大物メジャーリーガーたちの影響を受け、ウエイトトレーニングに励みつつ体重も大幅に増やしてパワーアップに余念がないと聞く。だが近年はケガやコンディション悪化で手術も繰り返し、1シーズンもまともにプレーできないような状況となっているようでは、それこそ本末転倒である。

 昨年末に石井GM兼監督から報道陣を通じて発せられたメッセージについてオコエ本人は「ゲキ」という優しいものではなく「最後通告」としてとられるべきだろう。そうでなければ、近々にも「戦力外」は現実味を帯びる。オコエ自身が高校時代から最大の目標としているメジャーリーグ移籍など夢のまた夢で永久に実現することなく終わってしまう。

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