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2022年4月22日

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、ロシアが南東部の要衝マリウポリを掌握したと発表したことについて、これを否定した。市内の製鉄所に立てこもっているウクライナ部隊員も、抗戦を続けると話したが、多数の民間人を脱出させる必要があるとした。

ロイター通信によると、ゼレンスキー大統領は、マリウポリの大部分はロシアに制圧されたが、一部にウクライナ部隊が残っていると述べた。

大統領はまた、民間人12万人がマリウポリから避難できずにいると説明。ロシア兵捕虜との交換を条件に、市民を避難させるようロシア側に提案しており、返答を待っているとした。

製鉄所内で民間人動けず

ロシア軍が攻勢を強めてきたウクライナ南東部マリウポリにあるアゾフスタリ製鉄所の状況について、立てこもりを続けているウクライナ・アゾフ大隊の隊員が21日、破壊された施設の下に民間人が閉じ込められているとBBCに語った。市長は製鉄所内に最大1000人の民間人がいるとの見方を示した。

マリウポリをめぐっては、ロシア政府が21日、完全に掌握したと発表。ウラジーミル・プーチン大統領は、トンネルと作業場が迷路のように続いている同市のアゾフスタリ製鉄所について、攻撃を中止し、「ハエ1匹逃げられないよう」徹底封鎖するよう命じた。

これに対し、製鉄所内のアゾフ大隊幹部のスヴィアトスラフ・パラマル氏は、ロシア軍の波状攻撃を跳ね返したとBBCに説明。「いつも言っているが、私たちがここにいる限り、マリウポリはウクライナが掌握し続ける」と話した。

同氏はまた、ロシア軍が戦艦から爆撃しており、地下に貫通する爆弾を投下したと説明。「アゾフスタリの敷地内にある建物はすべて、実質的に破壊されている」、「地下壕にはけが人や死者がいる。民間人ががれきの下で身動きが取れなくなっている」と述べた。

負傷兵500人が治療受けられず

パラマル氏によると、民間人と兵士は別の場所にいて、民間人は1つの地下室につき80~100人いるという。民間人とは連絡を取り合っており、中には生後3か月の赤ちゃんや、薬が必要な高齢者もいるという。

重傷を負った兵士は500人近くに上っているが、手足の切断などの本格手術を含め、必要な治療は受けられていないという。医薬品が不足し、兵士の遺体は埋葬できないままになっているという。

製鉄所内の人数は、建物が破壊され砲撃が続いていることから、民間人については把握できないと同氏は話した。防衛隊については、「攻撃を跳ね返すのに十分な」人数がいるとだけ述べた。

BBCはこれらの説明の真偽を確認できていない。

アゾフ大隊は極右のネオナチ団体だったが、のちにウクライナの国家警備隊に組み込まれた。そうした経緯から、評価は分かれている。

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ロシア兵に恐怖心

マリウポリでは現在、アゾフ大隊のほか、海軍、国境警備隊、警察隊が防衛に努めている。

製鉄所にいる民間人については、安全な場所への移動を実現できるよう、ウクライナの防衛隊が国際社会などに呼びかけている。

マリウポリでは20日、人道回廊による6000人規模の避難が計画されたが、80人ほどしか退避できなかった。パラマル氏は、製鉄所内の民間人について、ロシア人を信用せず、拷問や殺害、ロシアへの強制移動を恐れていると話した。

同氏はまた、ウクライナの防衛隊についても可能なら安全に脱出させたいとした。ただ、ロシアが安全の保証と引き換えに投降を呼びかけていることについては、ロシアは信用できないとし、降伏する気はないとした。

市長もロシアの声明を否定

一方、マリウポリのヴァディム・ボイチェンコ市長は21日、ロシア軍に包囲された市内には約10万人が残っていると述べた。

アゾフスタリ製鉄所にいる民間人は把握が困難だとした上で、300~1000人との認識を示した。それらの人々が同日、製鉄所から脱出するのは無理だとした。

また、市内では約200人が避難の準備をしているが、夕方前までにバスは到着していないと述べた。

市長は、「(ロシアが)どんな声明を出そうと、マリウポリはウクライナの都市であり続ける」と話した。

マリウポリの市議会はこの日、ロシア軍が殺害した市民らの遺体を、同市近郊の村に作った大規模な集団埋葬地に埋めているとし、埋葬地だとする衛星写真をソーシャルメディアに投稿した。

BBCはこの主張の真偽を確認できていない。ロシアはこれについてコメントしていない。

米大統領「陥落の証拠ない」

アメリカのジョー・バイデン大統領は21日、ロシアがマリウポリを制圧したと発表したことを受け、「疑わしい」との見方を示した。

バイデン氏はホワイトハウスの記者会見で、「マリウポリが完全に陥落したという証拠はまだない」と説明。

また、マリウポリの製鉄所などから民間人が移動できるよう、人道回廊の設置を求めた。

アメリカが追加軍事支援へ

バイデン米大統領はまた、ウクライナに8億ドル(約1030億円)規模の追加支援を発表した。

アメリカは先週、同規模の軍事支援を発表したばかり。

米財務省も、軍事支援とは別に、公務員への給与の支払いや公共サービス提供のために、5億ドルの財政支援を実施すると発表した。

ドネツク州の42村をロシア軍占領

ウクライナ大統領の首席顧問を補佐するオレナ・シモネンコ氏は、東部ドネツク州の42村をロシア軍が占領したと、国営テレビで明らかにした。

同氏は同時に、それらの村をウクライナ軍が「明日にも取り返す」可能性があるとした。

ロシア軍は、ドネツク州とルハンスク州からなる東部ドンバス地方で、制圧範囲の拡大を目指して攻撃を続けている。

防衛問題が専門の米シンクタンクは、ロシア軍は前日にわずかに前進し、いくつかの前線の町を占拠したと分析した。

「ロシアが停戦拒否」とゼレンスキー大統領

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、キリスト教・正教会の復活祭(24日)に停戦を提案したが、ロシアに拒否されたと述べた。

ビデオ演説の中でゼレンスキー氏は、停戦は拒絶されたが、平和への希望は持ち続けているとした。ロシア政府は、同氏の説明に反応していない。

世界のキリスト教関係者らは、ロシア正教会に対し、ウクライナ侵攻を非難するよう求めている。ロシア正教会はこの問題でコメントを出していない。

ゼレンスキー氏は同日、世界銀行と国際通貨基金(IMF)の会合でビデオ演説をし、ロシアが世界の食料供給を脅かしていると非難した。

ゼレンスキー氏は、ロシアが黒海の港湾都市を封鎖しているため、小麦などの食物を輸出できないと説明。

また、ウクライナでは戦争によって深刻な「経済損失」が生じているとし、ひと月あたり70億ドル(約9000億円)が必要だと訴えた。以前の「月50億ドル」から額が拡大した。

ゼレンスキー氏は、「ロシア軍はウクライナの生活の経済基礎となるものすべてを破壊しようとしている。鉄道駅、食料倉庫、原油精製所などだ」と主張した。

(英語記事 Mariupol: 'We have wounded and dead inside the bunkers'Live Reporting

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61177793

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