2022年7月1日(金)

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2022年6月21日

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ナタリー・シャーマン、ビジネス記者、ニューヨーク

アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は15日、約30年ぶりとなる大幅な利上げを発表した。高騰する消費者物価の抑制に一段と力を入れるためだ。

FRBは、民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利を0.75%ポイント引き上げ、1.50~1.75%の範囲にすると発表した。

この影響は、アメリカの内外で、経済の隅々にまで到達する。

アメリカの金利引き上げがあなたにどう影響するか、その5つの形を説明する。

住宅ローンなど借金の金利が高くなる

直ちに影響が出るのはアメリカ国内だ。住宅ローンやクレジットカードのローン、学生ローンなど、様々な借金にかかるコストが上がる。

人気の30年固定金利住宅ローンの金利はすでに、2008年以来最も高い6%近くにまで上昇した。アメリカで中央値の価格の住宅を買おうとする人にとって、毎月の返済額はおそらく年初から600ドル(約8万円)は増えているはずだ。

「もっと早くから家探しを始めればよかった」と、オハイオ州の元教師デロレス・ロビンソンさんは言う。ロビンソンさんは今月になって新しいマンションを買ったばかりだ。

ロビンソンさんは比較的、低金利でローンが組めたので安心したものの、家探しを始めた時よりは金利は高くなっているという。しかし人によっては、金利が高すぎてマイホーム購入を諦めるしかない人も出てくるだろう。

全米不動産業者協会は、アメリカでの住宅販売が今年は9%減ると予測している。

金利上昇のせいで家が買えなくなる人にとって厳しいだけでなく、近年は2ケタの上昇が続いていた住宅価格の伸びも5%に抑制される見通しだ。

もしそうなった場合はインフレ率が下がり、FRBの金融引き締め策は奏功しているということになる。

年金受給額は少なく、ウーバーの利用料金は高くなる

金利が上昇すると、投資先が劇的に入れ替わる傾向がある。一般的な景気への懸念が高まっている今、その動きは特に顕著になっている。

アメリカで「401k(退職金を積み立てる個人年金)」口座などで株式市場に資産を持つ人にとっては、資産価値が急落していることになる。

S&P500種指数は今年1月の初めから20%以上、下落している。これは弱気相場の節目とされている。ナスダックも、その価値の3分の1近くを失っている。

暗号資産などリスクの高い資産も価格を下げており、アメリカ国外の株式市場にも影響が出ている。

投資会社も、配車大手ウーバーのように何年も赤字経営を続ける会社に収益性を求めるなど、高リスク投資から手を引いている。

この結果、配車タクシーや宅配便などの料金が高くなるか、そういう企業は廃業するかもしれない。食料品を注文から15分で配達するとうたったスタートアップ企業が、米ニューヨークでいくつか誕生しては倒産したように

ウーバーの ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は先月、従業員あての手紙で、新規雇用の縮小を含めた収益化対策について語り、「投資家は、不透明感がある時期は安定を求める」と述べた。

「市場が激変しているのは明らかで、私たちはそれに対応する必要がある」と、コスロシャヒ氏は書いている。

雇用市場の低迷とリセッション(景気後退)リスク

需要の落ち込みから、パンデミック後の労働市場の急成長も終わりつつある。パンデミック直後の企業は激しい競争の中で労働者を求め、高給やその他の手当を提示したため、労働者の多くはより良い職への転職が推進されたのだが。

米不動産大手レッドフィン・アンド・コンパスは今週、業績悪化と金利上昇を理由に、数百人規模の人員整理を発表した。

ウーバーやアマゾン、ウォルマート、テスラ、スポティファイといった大企業も、新規雇用の縮小や停止を発表している。

FRBのジェローム・パウエル総裁は、アメリカの労働市場ではなお需要が供給の2倍近くあるなど、非常に売り手市場になっていると指摘。同国経済が大量の雇用喪失を回避すると期待していると述べた。

しかし、インフレによるコスト高や個人の購買力の縮小などから、アメリカ経済はすでに困難に直面していた。

今年の第1四半期(1~3月)はすでにマイナス成長だった。これは国際貿易データのゆがみによるものだとされているが、小売売上高など他の指標にも暗雲が立ち込めている。

高い金利と弱い経済が合わされば、FRBの対応は、リセッション(景気後退)と呼ばれる持続的な下降を招く危険があるとアナリストらは、指摘する。

強い米ドル

米ドルは今年に入り10%上昇した。FRBの動きにより、投資家がより高いリターンを求めてアメリカに資金を移動させ、ドル需要が高まったからだ。

イギリスでは今週、1ポンドが1ドル20セントを割り込み、パンデミック以来の安値となった。イギリス旅行を計画しているアメリカ人にとっては、これは良い兆しだ。

しかしそれ以外の国では、米ドルの上昇により、ドル建て取引の多いエネルギーや食料といった商品の輸入が割高になる。政府がドル建ての債務を多く抱えている場合は特に、経済的負担が大きくなる。

シティ・インデックスの市場アナリスト、フィオナ・シンコッタさんは、「最も被害を受けるのは新興市場になることが多い」と述べた。

アメリカ以外でも高金利に

こうした力学が働いているため、アメリカだけが金利引き上げに動いているわけではない。

イギリスの中央銀行イングランド銀行をはじめ、スイスやオーストラリア、カナダなど十数カ国も、ここ数カ月で利上げを発表している。

こうした国の多くは、国内のインフレ率とも戦っているが、世界最大の経済国であるアメリカでの出来事にならってもいる。

クウェートやサウジアラビアといったドルペッグ制を採用している国では、アメリカでの利上げの影響は即座に表れる。こうした国々の中央銀行は足並みをそろえて金利を引き上げ、アメリカへの資金流出を抑えようとする。

こうした動きが実際にに感じられるようになると、アメリカの経済情勢が引き続き注目されることになる。

(英語記事 Five ways US rate rise will affect you

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61862403

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