2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月10日

 インドの総選挙は4月19日から6月1日にかけて州別に7回に分けて段階的に実施され、6月4日に開票される。近年、モディ政権の強権化とインドの民主主義の弱体化などが強く懸念されている。

インドのモディ首相(ロイター/アフロ)

 フィナンシャルタイムズ紙の4月3日付け社説‘The ‘mother of democracy’ is not in good shape’は、著名な野党指導者のアルビンド・ケジュリワルの逮捕など野党陣営に対する政権側締め付けが目立ち、インドの民主主義の後退が懸念されることについて、西側民主主義国は口をつぐむべきでないと論じている。要旨は次の通り。

 自由な言論と野党に対する締め付けは、特に5年前の総選挙における2度目の勝利の後において、モディのBJP(インド人民党)の支配に特徴的である。税務当局や司法当局による政府批判に対するハラスメントは日常のこととなった。BJPのヒンズー国家主義はインドの世俗的な民主主義の伝統を浸食している。

 野党や野党政治家に対する抑圧に法執行当局が使われ、それは強化されている。その明白な例は2015年以来デリー連邦直轄領の首相を務め、最も著名な野党指導者の一人であるアルビンド・ケジュリワル(AAP(アーン・アアダミ党)の幹事長)が3月21日に逮捕されたことだ。彼は経済犯罪を取り締まる機関によって酒類販売に係わる「詐欺」に関して尋問された後に拘束された。

 他の野党の幹部も法執行当局によって逮捕されハラスメントを受けている。BJPは、逮捕は政治的動機によるものでなく腐敗を根絶するモディの努力の一環だと言っている。野党はBJPの幹部やモディの仲間は誰も逮捕されていないと反論する。

 BJPが野党陣営の締め付けを必要と思っていることは不可解である。世論調査によれば、BJPは3度目の5年の任期に向けて順調に進んでいる。

 ライバルはBJPに代わる強力な選択肢を提示できていない。野党の統一戦線として組織されたはずのIndia National Development Inclusive Allianceは、内輪もめとBJPへの鞍替えにつきまとわれて来た。

 インドは今日、世界で最大で最も活力ある経済の一つである。インドはその文化と伝統に従って民主主義を運営する必要がある。


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