2024年12月22日(日)

インドから見た世界のリアル

2024年4月22日

 イーロン・マスク氏といえば、世界をリードする起業家である。電気自動車メーカーであるテスラの最高経営責任者だ。そのマスク氏が、インドのナレンドラ・モディ首相と会うことが決まった。時期は4月から延期となったものの、インドを訪れ、インドへの大型投資を発表する模様だ。

イーロン・マスク(左)とモディ氏は2023年6月にニューヨークで会談していた。テスラのインドへの投資は実現するのか?​(Anadolu / gettyimages)

マスクの「地政学」を取り入れた経営戦略

 一般的には、この話はビジネスの案件だ。経済の専門家が語るべき話だろう。しかし、最近の国際情勢が、経済をリードするマスク氏にも、安全保障への関心を高めさせているようにも見える。

 例えば、マスク氏率いるテスラは、中国への投資を発表する一方で、中国に対抗する投資にも積極的に取り組んでいる。中国へのサプライチェーンの依存が懸念され、近年、中国以外の各国で開発が始まっているレアメタル事業、例えばインドネシアのニッケル製品関連事業にテスラは投資し、購入している。今回のインドへの投資も、中国での事業が安全保障上の理由で阻害された際に役立つかもしれない。

 中国市場で損をしても、インド市場で得をすれば、損失を穴埋めできるかもしれないからだ。つまり、今、投資に求められている重要な要素は、安全保障上、または「地政学的リスク」とよばれるリスクを最小限にする、多角化した投資なのかもしれない。

 一方で、マスク氏は、地政学的なリスクをチャンスに変えた実績を持つ。マスク氏は、SpaceX社の創設者でもあり、ロシアがウクライナに侵攻した際には、「スターリンク」と呼ばれる通信端末を配り、その有用性を世界に示した。最初は無料で、販売促進効果を上げた後、途中から料金を請求するあたりも、商人としての顔なのだろう。

 さて、そのようなマスク氏と会うモディ首相の思惑は何だろうか。モディ首相にとっても安全保障は重要で、マスク氏との会談は、それに貢献する側面がある。


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