そして、一旦、武装蜂起が始まれば、過去と同じように、中国とパキスタンは、これを支援する可能性がある。つまり、インドに大型の投資を呼び込み、若者に仕事を作ることは、インドにとっては安全保障問題なのである。
最新技術を自国で作りたい
また、中国と争うモディ首相には、もう一つの安全保障の課題がある。技術開発能力の向上である。
次々と新型兵器を開発するようになった中国に対抗していくには、インドも技術開発能力を高めなければならない。インドの兵器輸入額は、今、世界トップになっているが、兵器を輸入しているだけではだめで、自国で開発しなければならないのである。
現在のインドの兵器開発は、ようやっと自国製の戦車、艦艇、戦闘機を作れるようになったし、ミサイルに関しては、世界トップレベルになりつつある。だが、全体には、ようやっと追いつき始めた程度で、国産の武器でも、そこに搭載した最新の部品は外国からの輸入である。これで中国と争っていくには、まだまだ不利な勝負である。
インドは、外国から技術を導入し、自国でつくれるようになりたい。半導体産業なども含め、積極的なハイテク技術の導入も必要となっている。その点でも、マスク氏に会って、投資を促したいのである。
14億人の安定へ、海外投資を促す
今後、モディ首相は、マスク氏だけでなく、多くの起業家に会い、投資を促すだろう。もともと社会主義だったインドは制度面でも、海外の投資を呼び込むのに改革を必要とする多くの問題を抱えている。
しかし、14億の人口に、安定した生活を与え、中国とパキスタンの介入に対抗することができるか。それは、インドの政権が抱える、逃げることのできない、重要な安全保障問題といえる(※モディ政権は実際に治安を重視しているものとみられ、現在、治安情勢は改善傾向にある)。