2024年6月25日(火)

インドから見た世界のリアル

2024年4月22日

武装蜂起を抑えるための外資誘致

 モディ首相がマスク氏と会う際に、安全保障はどうかかわるといえるだろうか。軍に「スターリンク」を導入する話だろうか。

 インドの安全保障を考える際、忘れてはいけないのは、インドの安全保障は、単に軍事だけではない側面だ。例えば、インドは、中国とパキスタンを念頭に安全保障を考える。しかし、中国とパキスタンは、単に軍隊で国境を侵犯するだけではない。

 インドが民族的に多様で、貧富の格差もあり、社会に不満があることを利用しようとする。現在でもインドでは、貧しい人々を中心に毛沢東主義派を結成し、武装蜂起が続いている。

 1967年に、武装蜂起が始まった時、中国共産党の機関紙『人民日報』は、「インドのとどろく春雷」として毛沢東主義派の武装蜂起を宣伝し、政治的に支援しただけでなく、物理的にも武器などを提供してきた疑いがある。インド北東部でも、多くの武装組織が結成され、独立武装闘争が行われてきた。

 その多くは和解、鎮圧、犯罪組織化し、今では、沈静化しつつあるが、これも、中国国内に拠点を持ち、中国が武器を提供して来た組織とみられている。このような中国によるインド国内に対するテロ支援は、1980年代にインドの外相が訪中した際、中国側が「それは過去のものになる」と発言し、終わったものとみられていた。

 それ以降インド政府も、中国をテロ支援で非難しなくなった。しかし、現在でも、武装勢力から、中国製の武器が多数みつかっている状態だ。

 パキスタンも同じようなことをしてきた。通常戦力で劣るパキスタンは、インドに小さな傷をたくさんつける戦略、テロ支援による「千の傷戦略」によって、インドの国力を削ぐことを狙ってきた。だから、パンジャブ州のシーク教徒の武装蜂起や、カシミールのインド管理地域での武装蜂起では、パキスタンの公然たる支援が問題だった。

 つまり、インドにとって安全保障の重要な側面の一つは、国内の武装蜂起であり、中国とパキスタンがこれを支援してきたことが問題であった。

 そう考えると、モディ首相が何を狙っているのか、わかる。インド経済を語るとき、人口構成が若いから将来性があるといわれるが、その若い人口に十分な仕事が与えられなければどうなるか、武装蜂起につながるのではないか、常に不安がある。しかも、過去の紛争のデータを見ると、それは根拠のない不安ではない。

 例えば、『文明の衝突』という本を書いたハーバード大学の故サミュエル・ハンチントン教授は、「スリランカでは、シンハリ族の民族主義的な反乱が1970年代に、またタミール族の反乱は1980年代末に最高潮に達したが、これは両集団で15歳から24歳までの「若者の数の膨張」が、その集団の総人口の20パーセントを超えたのと時期を同じくしている」と指摘している(サミュエル・ハンチントン著、鈴木主税訳『文明の衝突』集英社、395ページ)。インドの人口構成を見ると、14~25歳の人口は全体の18%程度。しかし、14歳以下の人口が25%を占めているから、理論だけでいえば、武装蜂起が最高潮になる時期はこれからくることになる。


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