2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月10日

 米国、英国、その他幾つかの西側の民主主義体制には疲労の徴候が見られる。しかし、モディの民主主義擁護のレトリックと現実の間のギャップは広がっている。

 これは、単にその国民の権利と自由にとっての問題ではない。インドの投資にとっての魅力、および権威主義的な中国を警戒する諸国にとっての地政学上のパートナーとしての魅力は、インドの民主的で法に基礎を置く国としてのイメージに主として依拠するものである。

 インドの意を迎えたいとの願望ゆえに、西側民主主義諸国は往々にして民主主義の後退に口をつぐむことになる。しかし、それには変化の徴候が見える。

 ニューデリーが米国大使館の次席を招致してケジュリワルの逮捕についてのワシントンの批判に抗議したが、その後も米国はその懸念を繰り返した。他の民主主義諸国も同様に強くあるべきである。

 政治的自由の保全は、インドの成長と繁栄、およびグローバルな社会の指導国家としてのインドの役割を高めたいモディの政府の野心に資することである。

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権力保全のための「腐敗の摘発」

 上記の社説が特に取り上げているケジュリワルの一件は、選挙直前の時期にたまたま起きた事件のようには見えない。他の野党指導者の逮捕など一連の抑圧的措置の一環と思われる。BJPは、腐敗の根絶のために法執行当局がその仕事をしているに過ぎないと言うが、腐敗の摘発が権力保全の関連で世界のあちこちで使われていることは指摘するまでもない。

 議会下院選挙は、モディのBJPの圧勝が確実視されている。モディの人気は高く支持率は78%に達する。

 543議席のうちBJPを中核とする与党連合で400議席を獲得することさえあり得る状況のようであるが(現在は346)、BJPによるヒンズー主義の強権的な政治に鑑みれば、寛容で世俗的な国であるはずのインドの将来が懸念される。しかも、モディの後継者は更に極端なヒンズー主義者(例えば、内務相のアミット・シャーやウッタル・プラデシュ州首相のヨギ・アディティヤナート)かも知れないという憶測がある。

 そのようなインドとどのように付き合うのか?そのインドは諸外国から国のあり方を批判されることに神経過敏に反応することがケジュリワル逮捕の一件でも明らかになっている。


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