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2022年6月25日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

ラジカルなアイデアが生まれやすいのは対面

 ミシガン大学の組織とマネジメント学教授ジェフ・デグラフ氏は「ラジカルなアイデアが生まれやすいのは対面での議論だろう。ただしアイデアを実現させる工程では、リモートもほぼ同様の効率を生み出すため、リモートと出社のどちらが良い、という議論は成り立ちにくい」と分析する。

 しかし、同じネイチャー誌の2021年の調査で、マイクロソフト社員1万人を対象にしたアンケートでは「リモートでは社員同士の共同作業がしにくいと感じる」と回答した人が多数を占めた。デグラフ教授のビデオ会議実験でも、学生をペアにしてある製品の新しい使い方について協議させたところ、対面で議論したペアの方がより多くのアイデアを思いついた。ビデオ会議組はお互いに目を合わせることが少なく、実際の製品への目配りも少なかった、という。

 ただし、テレワークの普及は仕事に新しい可能性をもたらした、と分析するのはシカゴ大学のチームだ。テレワークと出社を組み合わせたハイブリッド、そしてこれからはロケーション・ニュートラルな働き方が主流になる、と予測する。

 ロケーション・ニュートラルとは、世界中どこにいても同じ仕事ができる、という考え方だ。米国企業がインドやその他で優秀な人材を採用し、テレワークの手法を用いて仕事に参画させる。特にハイテク企業において人材不足は深刻で、世界中から優秀な人材を集められるという利点がある。

 ロケーション・ニュートラルはカスタマーサービスなどでは以前から採用されており、新しいアイデアではない。しかし最新の技術を用いて上級職でも導入できるようになる、という点が新しい。ハイテク、ITでは機密事項の扱いなどが問題になるが、クローズドネットワークや、今後はメタバースなどにより、安全に情報を共有できるようになる可能性があるためだ。

 米企業にとっては雇用のしやすさ、コスト削減などのメリットがあり、雇用される側にも選択肢が広がることになる。今後はテレワークをより推進する企業とそうではない企業と分化することも予測されるが、テレワーク推進側には従業員同士のコミュニケーションをどう図っていくのか、という課題が残されそうだ。 

  
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