アカデミー賞授賞式で俳優ウィル・スミスがプレゼンテーターのコメディアン、クリス・ロックを平手打ちした件で、スミスが米映画科学芸術アカデミーから退会することを明らかにした。日本ではロックのブラック過ぎるジョークからスミスを擁護する声が大きいが、米国では暴行事件と捉えられている。
告訴しなかったロック
ジョークは脱毛症に苦しむスミスの妻、ジェイダさんを「GIジェーン(GIジョーの人形は軍人らしい坊主頭で、ジェイダさんの容姿をからかったもの)」と呼んだことで、悪趣味で下品だ。会場は笑いに包まれたものの、ジェイダさんは憮然とした表情だった。これを見たスミスはニヤニヤしたまま壇上に上がり、いきなりロックをビンタした。
米国内にもスミスを擁護する声はあるものの、やはり全国に生中継される番組の中で暴力行為におよぶことは許されない、という論調が優勢だ。実際、ロックが告訴すればスミスは暴行罪で逮捕される可能性があり、会場にはハリウッドを管轄するロサンゼルス市警(LAPD)が駆けつけていた。だが、ロックが告訴するつもりはない、として逮捕には至らなかった。
これが明らかになり、男を上げたのはジョークを口にしたロックの方だ。授賞式後に初めてコメディーショーに出演したロックは会場からスタンディングオベーションを受け、涙ぐみながら「何が起きたのか、今はまだ消化しきれずにいる」などと語った。
一方のスミスは授賞式翌日にSNSを通してロックに謝罪し、自分の行動は「許されるものではなく、私は自分がこうありたいと考えていた人間から逸脱していた」と表現。ジョークの内容がどうであれ、暴力を振るったことは間違っていた、と認めた。