WEDGE REPORT

2022年2月11日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 『WIRED』誌創刊編集長で、テクノロジーの進化について長年、考察し論じてきたケヴィン・ケリー氏のインタビュー記事を「Wedge Online Premium」にて、販売しております。この度、記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
ケヴィン・ケリー 『WIRED』誌創刊編集長
出典:https://kk.org/portraits

 私が未来の技術として最も注目しているのは自動運転だ。ただし完全な自動運転社会が実現するにはまだ20年以上は必要だろうと考えている。そこに至るには長くじっくりとしたプロセスが必要だからだ。

 ウェイモ(グーグルの自動運転部門)が現在、自動運転では先行しているといわれる。自動車そのものを自動で走らせる技術はすでに存在するだろう。しかし、社会の中で自動運転を実現していくには、道路インフラそのものを作り替えていく必要がある。車のレーン、信号、自動運転タクシーのピックアップエリアなど、なすべきことは多い。

次の新しい技術を作るのは無名のスタートアップ

 私は常々、次の時代を作る新しい技術はGAFAではなく無名のスタートアップから起こる、と主張している。GAFAそのものが古い技術や企業を変革するものだったが、巨大になればなるほど斬新な変化には対応しにくくなるためだ。

 それは、自動車業界を見れば明白だ。新興企業であるテスラが今や電気自動車(EV)の中心になりつつある。中国では格安で性能も良いEVが作り出されている。こうした波に、既存の大企業が飲み込まれていくかもしれない。

 話題の「メタバース」についても同じことが言える。フェイスブック(現メタ)が事業としては初めて参入したが、メタが行うメタバースが全体を席巻することはないだろう。パイオニアであってもメタバースの覇者にはなれない、というのが私の考えだ。

 私が注目しているのは、AR(拡張現実)を使い、現実世界の上に仮想の情報空間を重ねていく「ミラーワールド」の存在だ。例えば、何かの製品をAR用のサングラスなどを通して見たときに、その製品情報が目の前に現れる。生産地、価格、素材、などさまざまな情報を瞬時に確認できる。

 対人であっても、その人の名前、略歴などが見られるようになるかもしれない。他人に対して自分の情報をどのように公開するかにより、デジタルツインという概念にもつなげることができる。

 個人的にはVR(仮想現実)を使ったメタバースよりも、こうしたミラーワールドの方が先に到来するし、広く普及するのではないか、と考えている。

 もちろんメタバースそのものがまだ生まれたばかりの概念であり、定義も定まっていない部分がある。没入型のゴーグルを使ったVR空間のままでは多くの人をそこに引き寄せることは難しいが、ARと組み合わせて日常生活の中にメタバースの概念を持ち込む、つまりミラーワールドとのハイブリッドのようなものが生まれるかもしれない。

 いずれにせよ、自動運転、メタバース、ミラーワールドといった新しい技術の普及にはまだ時間がかかり、それを一気に実現に向かわせるためには、今はまだ存在しない画期的なブレークスルー技術が必要になる。

 次のiPhoneのような、世界を一気に変えるような新しい技術は、中国から生まれてくるのかもしれない。それは中国で次々に新しい企業が生まれ、新しい技術に挑戦し、今や世界の製造業の中心になりつつある、という事実から推測することだ。

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