現行制度の維持・温存は
国を滅ぼす
現在の延長線上に「未来」があるという認識では、日本社会は立ち行かなくなる。生産年齢人口が減少し、働き手が減る中でいかに生産性を高め、活力ある日本を維持・発展させていくかの国家戦略が必要だ。そのためにはまず、日本が今後どのような社会を目指していくのかという議論が欠かせない。
例えば、国民が等しく貧しくなってでも〝安いニッポン〟を維持するのかしないのか、便利でしかも安いコンビニエンスストアの24時間営業は本当に必要なのか、食糧危機が現実味を帯びる中で日本の農業をどうするのか、などだ。当然、これまで「当たり前」とされてきた前提を改革していくうえでは痛みを伴うだろう。しかし、いつまでもこの議論から逃げてはいけない。
日本のグランドデザインを描いたうえで、そのために必要な労働力を算定することと並行して、まずは日本人で人手不足を自給するために取り組まなければならない。われわれが理想とする社会を実現するために、国内の人材を確保する努力をしてもなお労働力が不足するのであれば、外国人労働者を日本社会で生きる「1人の人間」として、そして、「仲間」として受け入れ、共生していくための努力と制度設計をしていくことが不可欠だ。もはや、移民の議論を避けるという選択肢はない。
日本人が〝便利で安価な暮らし〟を求め続け、現行制度を維持・温存すれば、日本はますます外国人労働者から〝選ばれない国〟になっていくだろう。そうなれば、外国人労働者の存在を前提として成り立つ現在の日本社会は間違いなく破綻する。
その先にあるのは、魅力をなくした日本から日本人が飛び出し、逆に「外国人労働者」として海外で〝便利使い〟される未来だろう。そんな日本にしていいはずがない。
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〝人手不足〟に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。
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