
米フロリダ州パークランドの高校で2018年に起きた銃乱射事件で、17人を殺害した罪に問われている被告に対する量刑の審理が18日、同州の裁判所で始まった。陪審は、被告を死刑にするか終身刑にするか決める。
アメリカの刑事裁判は多くの場合、陪審が被告について罪の有無を判断し、判事が量刑を決める。しかしこの事件では、陪審が量刑を決めることになっている。
ニコラス・クルーズ被告(23)は、昨年10月の裁判で、17件の第1級殺人で有罪を認めた。被告は、事件のあったマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の元生徒で、退学処分を受けていた。
検察は死刑を求刑。弁護団は、仮釈放のない終身刑にすべきだと主張している。
州法では、陪審が死刑が相当だと判断した場合でも、判事は終身刑を言い渡すことができるとしている。
裁判は4~6カ月続くとみられている。テレビ中継も予定されている。陪審は男性7人、女性5人で構成されている。
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銃乱射事件の被告が陪審の前に姿を現すのは、アメリカでは珍しい。警察に殺されるか、自殺することが多いためだ。
今回の裁判はまた、同国で陪審が裁くものとしては、死者数が最も多いとされる。
涙を流して法廷を出る傍聴人も
検察はこの日、冒頭陳述をした。法廷は傍聴人で埋まり、多くの人は見るからに感情的だった。検察が銃撃の模様を時間を追って詳細に説明するのを、涙を拭いながら熱心に聞いた。
マイケル・サッツ主席検事が死傷者の名前を一人ひとり挙げると、傍聴していた女性の1人は涙を流しながら法廷を後にした。
サッツ氏は、殺人が「冷酷かつ計算、計画されたもの」だったことを法廷で明らかにしていくと語った。同氏はまた、事件当時19歳だった被告が事件数日前に撮影したビデオで、「次の学校銃撃犯」になると誓っていたと述べ、こう言った。
「目標に向けた、計画的で、組織的な殺人について、言葉にできないようなことを言葉にしていく」
一方、弁護団は、証拠を提示するまで最初の陳述を行わないことを選択した。弁護団の動きとしては珍しい。
事件で影響を受けた家族の一部は、死刑判決の支持を公言している。
被告はメモ帳に走り書き
この日の法廷では、事件の映像が初めて公開された。ある母親は耳をふさぎ、別の人は大きなおえつを漏らしながら前かがみになった。
ある場面の音声が流れると、傍聴席から「止めろ!」という叫び声が飛んだ。
黒っぽいジャンパーと黒いマスクを着けた被告は、ほとんどの間、メモ帳に目を落としていた。ときどき走り書きをし、弁護士に顔を向けていた。
事件は4年前のバレンタインデーに発生。被告は300発以上の弾丸を持ち込み、生徒14人と教諭3人を殺した罪に問われている。
弁護側は成育環境を説明か
陪審が死刑が相当と決するには、全員一致が条件となる。
検察は、この事件の残忍な状況を示す、いわゆる加重要因を証拠として提出し、被告に寛大な姿勢の陪審員の心を揺さぶる戦略だ。
また、新たな写真やビデオを何百点も使って、被害者や負傷者の話を詳しく述べていくとみられる。
一方、弁護側は、いわゆる軽減要因を具体的に示し、被告にとって終身刑が適切な罰だと求めていくことが予想される。
それら軽減要因には、被告の生い立ちや、子ども時代に性的虐待を受けたという主張、心の健康の問題に関する報告などが含まれる。
この裁判は、法的な小競り合いと新型コロナウイルスの大流行によってたびたび延期された。陪審員の選定には3カ月を要した。
アメリカでは、50州のうち27州が制度として死刑を維持している。そのうち、カリフォルニア、オレゴン、ペンシルヴェニアの3州は、死刑執行を停止している。
今年はこれまでに、5州で計7人の死刑が執行されている。
(英語記事 Parkland gunman faces death penalty as trial opens/Will the Parkland gunman get the death penalty?)