
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日夜、ロシア軍に占領された南部へルソン州で、ウクライナ軍が「一歩また一歩と」前進していると述べた。ヘルソン市は開戦から間もなくロシアに制圧された。
定例のビデオ・メッセージでゼレンスキー氏は、「占領者は(ヘルソンに)拠点を確立しようとしてきたが、それが何の役に立った? ウクライナ軍はヘルソン州に一歩また一歩と入り込んでいる」と述べた。
ヘルソンはドニプロー川沿いの戦略上の要衝。
最新戦況を分析するイギリス国防省は23日、ドニプロー川から西の南部へルソン州で激しい戦闘が続いているとして、ロシア軍について、補給線へのアクセスをウクライナ軍によって遮断(しゃだん)される危険に直面していると明らかにしていた。
AFP通信によると、へルソン州政府のセルヒイ・クラン顧問はウクライナのテレビに対して、「ヘルソン州は確実に9月までに解放されると言える。占領者の計画はすべて失敗する」と述べた。「我が軍は明確に前進しているのが見て取れる。防戦から反攻に転じている」。
クラン顧問は「すべての橋が(ロシアにとって)補給面での弱点で、我が軍は巧みに敵の態勢を破壊している」とも述べた。
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ウクライナ軍はヘルソン州でロシアの補給を断つため、各地の橋を攻撃している。23日にはドニプロー川の支流にかかるダリフスキ橋を砲撃した。そのほか、アメリカ提供のロケット砲システムで、ドニプロ川ーそのものにかかるアントニフスキー橋も攻撃対象にしている。
ロシア国営タス通信によると、ロシアがヘルソン州で立ち上げた行政府の幹部は、ウクライナ軍の攻撃が続けばアントニフスキー橋は崩落する恐れがあると認めた。
イギリス国防省は、アントニフスキー橋がロシア軍にとって「重要な弱点」だと指摘。23日には、「もしこの橋を使った渡河が不可能になり、占領下のヘルソン州に駐留するロシア軍が孤立すれば、ロシアにとって重大な軍事的・政治的な後退になる」と分析している。
ヘルソン州については今月初め、ウクライナのイリナ・ヴェレシチュク副首相が、南部へルソン州とザポリッジャ州でロシアが占領支配する地域から、住民は速やかに避難するよう呼びかけていた。この退避勧告は、現地でのウクライナ軍による反撃の前触れとみられていた。
副首相は「ウクライナ軍が反攻作戦において民間人を危険にさらさないようにするため」住民の避難が必要だと国営テレビで話していた。
ロシア兵1000人を包囲か
他方、ゼレンスキー大統領の上級防衛顧問、オレクシイ・アレストヴィッチ氏は、ヘルソン州でウクライナ軍が約1000人のロシア兵を包囲していると話した。
アレストヴィッチ顧問によると、へルソン州ヴィソコピリヤ村の近くでロシア兵たちが「戦術的包囲」下にあるという。BBCはこの主張を独自に検証できていない。
他方、ロシアのタス通信によると、ヘルソンではロシア編入に向けた住民投票の準備が進み、現地当局は選挙管理委員会を立ち上げているという。アメリカは、ロシアが名目上の住民投票によってウクライナの領土を併合するつもりだと非難している。
ロシアは開戦直後にヘルソンを比較的容易に制圧した。ウクライナ保安庁(SBU)が撤退時にドニプロー川の渡河地点を破壊しなかったことが、今月17日のゼレンスキー大統領によるイワン・バカノフSBU長官の解任につながったとみられている。
(英語記事 Ukraine war: Kyiv's forces moving towards occupied Kherson - Zelensky)