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BBC News

2022年7月30日

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米連邦最高裁で人工妊娠中絶に反対してきた保守派判事が、アメリカの憲法は女性の中絶権を保障しないと判断した最高裁判決を批判した各国首脳をからかう講演をした。アメリカの大学が21日にローマで開いた会議で、講演した際の動画が、28日に主催者のウエブサイトに掲載された。

米ノートルダム大学が宗教の自由についてローマで開いた会議で、サミュエル・アリート判事は、アメリカで中絶権を約半世紀にわたり保障していた「ロー対ウェイド」判例を覆した6月の最高裁判決をめぐり、判決を批判したボリス・ジョンソン英首相など各国首脳を非難。9月に退任するジョンソン首相については、アメリカの判決を批判したことの「代償を払った」などと嘲笑した。

米最高裁判事が公の場でこのような発言をするのは、きわめて異例。最高裁判事は、政治論争や外交問題についてコメントしないのが慣例とされている。

アリート判事の基調講演は事前に発表されていなかった。28日夜に主催者ノートルダム大学のサイトに動画が掲載された。

その中で熱心なカトリック教徒のアリート判事は、「実に多くの外国首脳が、アメリカの法律について意見を述べてもまったく構わないと思ったようで、最高裁の歴史の中で唯一、あまたの外国首脳に罵倒されたその判決を、私は光栄にも書くことができた」と述べた。

「ボリス・ジョンソンは(判決を非難した)1人だったが、おかげでその代償を払うことになった」と判事が言うと、会場からは笑いが起きた。政権内の相次ぐスキャンダルの末に今月初めに辞任を発表したジョンソン首相は、「ロー対ウェイド」判例を覆した最高裁判決について「大きな後退」だと批判していた。

アリート判事はこのほか、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やカナダのジャスティン・トルドー首相、英王室のハリー王子らの名前を挙げて、最高裁判決への批判を批判し返した。サセックス公爵ハリー王子は今月18日の国連演説で、最高裁がアメリカの「憲法上の権利を後退」させたと批判していた。

これについてアリート判事は「本当に傷ついたのは、サセックス公爵の国連演説で、名前を呼んではいけないあの判決を、ウクライナに対するロシアの攻撃と並べて比べているようだった」と述べた。

ハリー王子は国連演説で、「ウクライナでの恐ろしい戦争から、アメリカでの憲法上の権利の後退に至るまで、世界中で民主主義と自由に対する攻撃を目にしている」と発言していた。

アリート判事は会議主題の宗教の自由については、「全権を掌握したい者には危険なので、色々なところで攻撃されている」と述べた。

アリート氏は、2006年に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領に最高裁判事として指名された。

「ロー対ウェイド」判例を覆した最高裁判決をめぐっては、判決草案が5月にマスコミに漏洩(ろうえい)されるという異例の事態も起きた。この草案を執筆したのも、アリート判事だった。

米最高裁の信用は

米与党・民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員は、最高裁判事の「政治的な発言」を有権者は警戒すべきだとツイッターに書いた。

アリート判事がローマで講演したのと同じ21日には、中絶権の保障を支持するリベラル派のエレナ・ケイガン判事が、今の最高裁で多数を占める保守派が有権者の信用を失うようなことがあれば、「民主主義にとって危険」だと述べた。

米モンタナ州の会議で発言したケイガン判事は、「私は何か具体的な判断の話をしているわけではない。具体的な複数の判断に関する話でさえない。しかし、最高裁がいずれ国民や国民感情と何の結び付きも持てなくなったら、それは民主主義にとって危険なことだ」と警告した。

各種世論調査によると、連邦最高裁に対する国民の信頼はかつてないほど低下している。調査会社ギャラップ社が6月1~20日に行った調査では、最高裁を「大いに」あるいは「かなり」信頼すると答えた成人は25%。前年は36%だった。

調査は、「ロー対ウェイド」について判決草案がリークした後に行われたが、実際に判決は調査後に下された。

(英語記事 Samuel Alito: Top US judge mocks world leaders over abortion ruling

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62359324

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