人類の歴史は
エネルギーを中心に変化する
江崎 皆さんのお家にあるプリンターというのは、データを渡すと印刷して紙を出してくれます。印刷物を印刷所で印刷して配達するという過程は要らない、というのを皆さんも気付いているわけです。20年前にまだ写真の印刷所が街にありましたよね。
実はコンピューターもそうで、40年ぐらい前は学校の教室ぐらいの大きさだったんです。ですが現在、スマホの本当のサイズは指先ぐらいになりました。他はバッテリーとディスプレイですからね。
黒田 ディスプレーがなくなり、バッテリーが無線給電になれば、スマホは本当に小さくなります。ポケットに入れる必要もなくなります。
江﨑 「そもそもモノを持って動かすということをやめられるのではないか」を実現したのがコンピューターなんです。情報にすればモノでなくてもいい、ということに人々が気付き始めている。物流形態が根本的に変わります。そうすると、持ち歩いているスマホのような「エンド」のところで、エネルギーをどう確保するのかが、生きていく上でとても重要になります。
黒田 エネルギーも宇宙から来るようになるかもしれません。
江崎 空気がないから、宇宙はすごくエネルギー効率が良い。宇宙で発電し、それをマイクロ波で地上に送るんです。
川原 地球の太陽光は曇ると発電効率が下がりますが、宇宙は毎日快晴です。海上などに受電設備を置き、そこにマイクロ波で送る形ですね。何十年もプロジェクトが走っていて、発電をしてマイクロ波に変えて送るところまでは実はできています。
黒田 昔から、人類が戦争をする理由はエネルギーでした。イノベーションも、エネルギーの利用の仕方や、効率の上げ方でした。人類という観点から見ると、エネルギーをどうするかという問題が最も重要なのです。だから10年後、20年後も技術や社会はエネルギーを中心に変わっていくのかもしれません。
メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。
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