
ロシア入国時に大麻オイルを所持していたとして麻薬密輸などの罪に問われた米女子プロバスケットボールWNBAのブリトニー・グライナー氏(31)が4日、モスクワ郊外の裁判所で禁錮9年の実刑判決を受けた。アメリカ側はロシア政府に対して、グライナー氏の釈放にむけた交渉に応じるよう求めている。
グライナー氏は、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックと昨年の東京オリンピックの2大会連続で金メダルを獲得したアメリカ代表チームのメンバー。大麻オイルの所持を認めており、麻薬所持と密輸の罪で有罪となった。
グライナー氏は法廷で、「うっかりミス」によるもので、法を犯すつもりはなかったと述べた。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は、アメリカが「真剣な提案」をしたと述べたが、詳細は明らかにしなかった。
複数の米メディアは、米政府がロシアの武器密売人などとの身柄交換を提案しているようだと伝えている。
「死の商人」として知られるロシアの武器密売人ビクトル・バウト被告は、2012年に禁錮25年を言い渡され、アメリカ国内で服役中。
米政府は、グライナー氏と、ロシアで収監中の元米海兵隊員ポール・ウィラン受刑者との交換のため、バウト被告をロシア当局に引き渡す可能性があると報じられている。
アメリカ、イギリス、カナダ、アイルランドのパスポートを持つウィラン氏は、2020年にロシアでスパイ罪で有罪となり、禁錮16年を言い渡された。
カービー報道官は、グライナー氏とウィラン受刑者の2人は不当に拘束されており、釈放される必要があると記者団に述べた。
カービー氏はアメリカ側の提案について、「ロシアに受け入れるよう、強く求める。こちらが最初に提案したのは何週間も前で、その時点で受け入れるべきだった」と述べた。
しかしロイター通信によると、ロシアはドイツで殺人罪で終身刑判決を受けて収監されているヴァディム・クラシコフ受刑者をこの交換案に加えたい考えで、このことが交渉の妨げになっているという。
クラシコフ受刑者を交換対象に加える可能性について問われると、カービー氏はその可能性を否定し、「逆提案と呼ぶほどのものでもないと思う」と述べた。
世界最高の女性プレイヤーの1人とされるグライナー氏は2月、モスクワ近郊の空港で大麻オイルを含んだ電子たばこ用カートリッジが荷物の中から見つかり、拘束された。グライナー氏はアメリカのオフシーズン中に、ロシアで試合に出る予定だった。
それからほどなくしてロシアのウクライナ侵攻が始まり、グライナー氏の処遇は、アメリカとロシアの間で注目を集める外交案件になった。
弁護団はこの判決に対して控訴するとしている。
米政府は釈放求める
グライナー氏が所属するフィーニックス・マーキュリーのチームメイトは4日、コネチカット・サンとの試合前に、同氏の背番号42にちなんで42秒間黙とうし、連帯を示した。
ジョー・バイデン米大統領は判決は「容認できない」とし、「ロシアに対して、彼女が妻や愛する人々、友人、チームメイトと一緒にいられるよう、彼女を直ちに釈放するよう求める」と述べた。
こうした中、アントニー・ブリンケン米国務長官は「ロシアも、不当な拘束を行っているいかなる国も、海外を旅行し、海外で働き生活する全員の安全に対する脅威だ」と述べた。
ブリンケン氏は先週、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相との電話会談でこの問題を提起した。2人が会談したのは、ウクライナでの戦争が始まって以降、初めて。
2人は現在、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議のためカンボジアに滞在している。アメリカ側は、滞在中にブリンケン氏がラヴロフ氏との会話を試みるとしている。