前篇で書いたように、ボストン・マラソン爆弾テロ事件に関し、一時は容疑者ツァルナエフ兄弟のルーツがチェチェンであるため、チェチェン過激派との関係が疑われた。特に、兄タメルラン容疑者は、昨年1月から約半年間、米国を離れてロシアに滞在していた。ロシアのパスポートの更新が目的で、両親が住むダゲスタン共和国のマハチカラに主に滞在し、隣接するチェチェン共和国にも父と共に二度訪れ、親族や友人らと会ったとされる。
この半年に過激派との接触や訓練が会ったのではないかという疑念が強く持たれていたが、父親は実家にいた間は、遅くまで寝て、起きている間は礼拝か家の修繕の手伝いをしており、過激派との接触はありえないと主張している。
また、チェチェン過激派である「コーカサス首長国」側は自分達の「敵」はロシアであり、アメリカを攻撃することはないと、同事件との関係を否定している。チェチェン穏健派の亡命政権のザカーエフ首相もアメリカを憎むことはあり得ないと主張している。さらに、カディロフ・チェチェン大統領(プーチン派)は、「アメリカがテロリストを作った」と、主張し、当然ながら関係を否定している。
ロシアの反応
「無関係」から一変
チェチェン擁するロシアの反応はどうだったのだろうか。
クレムリン系インターネット企画の責任者であるポトゥプチク氏がテロ当日に、「私は米国人に何の同情も感じない。自業自得だ」とツイッターで書き込んだり、ネットユーザーがこぞって「米中央情報局(CIA)」の自作自演だ」と書き込むなど、ロシアには無関係という空気が漂っていたが、チェチェン人の犯行だと分かるや、ロシア人の反応は一変した。
CIAの自作自演と書き込んでいた者達も、兄弟がCIAにゾンビにされたなどと言い始めたり、「米政府は、ビザなし旅行の交渉を打ち切り、ロシアのイメージを損なうためにアルカイダやチェチェンを利用した」、「ボストンのテロは、ソチ五輪に反対する勢力が命じたものだ」という説まで書き込まれた始末だ。
他方、ソチ五輪の警備体制には変更はないという声明も出された。何故なら、そもそも最高レベルの警備が予定されていただけでなく、ソチと騒乱が多い他の北コーカサス地方との交通を分断する形での準備計画を進めており、万全の体制なのだという。