長すぎた空白の時間
MRJの「敗北」
半導体に並ぶ、歴史的な「諦め」がある。MRJ(三菱リージョナルジェット、その後MSJ〈三菱スペースジェット〉に改名)だ。2020年10月、三菱重工が小型旅客機MRJの「凍結」を決めた。身悶えしたくなるような「敗北」である。
MRJは、YS11以来、半世紀ぶりの国産旅客機になるはずだった。1兆円の開発費を投じ、機体は完成し、4000時間の試験飛行を実施したのに、ついに米国FAA(連邦航空局)から型式証明をもらえなかった。
単に一企業の敗北ではない。F86からF4、F15まで、輸入よりはるかに割高になるにもかかわらず、日本政府は一貫して三菱重工に戦闘機をライセンス生産させてきた。そこで航空機生産のノウハウを蓄積し、やがて民間航空機を創り出してほしい、という熱い思いがあったからだ。航空機の部品点数は自動車の100倍以上。機体のコンピューター制御から素材まで最先端技術の塊であり、航空機は日本の産業水準を新次元に引き上げる決め手と考えられてきた。だからこそ、経済産業省はMRJについて、開発費の3分の1を支援することを決めたのだ。MRJの敗北は、経産省の究極の産業政策の敗北でもある。
かくも無残な結果になったのは、なぜか。2つの小さな「諦め」が、途方もない「諦め」を招き寄せた、……
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