2024年7月15日(月)

Inside Russia

2013年5月20日

 CIAの手先になれば、1億円の報酬がある―。ビラには生々しい報酬の金額と要望が記され、作成した人物の体温が残っているようにも思える。ロシアではかつてのスパイ事件で、アメリカの情報機関に協力していたFSBの職員が実働6年間で200万ドルを稼いでいたことが暴露されていた。やはり、これぐらいが相場なのだ。

 書面には、連絡手段についても具体的な指示が記されていた。個人の携帯やE-mailアドレスを使ってはならず、インターネットカフェやWi-Fiのあるカフェに行き、新たなGmailアカウントを作れという。さらには、Gmailのパーソナルインフォメーションには、絶対に個人情報をいれてはならず、作成後は「unbacggdA@gmail.com」に空メールを送り、「1週間後にメールボックスで我々の返事をチェックせよ」と命令調の語句まである。

 これは映画の1シーンではない。フォグルは例え今回のリクルートに成功したとして、どうやってメールが協力者本人からのものであると見極めるつもりだったのだろうか。アメリカにとっての敵性国家であるロシアで、実際にエージェントと協力者の関係継続が、インターネットカフェでのGmailを通して行われているとすれば、これほど興味深い事実はない。ビラは、こんな表現で終わりを告げる。

 「最後まで文書を読んでくれたことに感謝する。あなたと近い将来、一緒に仕事をすることを楽しみにしている。あなたの友人より」

 外交官はウィーン条約により刑事裁判権から免除され、身体の自由を保障されている。ロシアの治安機関は外交官を拘束したとしても逮捕はできない。

ボストンマラソン爆破テロ事件との関連性

 フォグルはモスクワ南西部の公園からFSBの施設に連行された。アメリカ大使館員がフォグルを引き取りに来るようこの施設に呼ばれた。FSB幹部はこの大使館員の前で、拘束の理由を打ち明けた。

 その部分も公開された。幹部の説明は、今回の事件の背景と4月にアメリカを震撼させたボストンマラソン爆破テロ事件の関連性を結びつけるものだった。

 「この人物は、彼(捜査官)にエスピオナージの協力として、10万ドルのお金を渡すと約束したんだ。最初、我々は目の前で起こったことに信じられなかった。なぜなら、あなた方(米大使館員)がご存知なように、FSBはボストン事件の捜査に積極的に支援しており、その協力には米国の安全保障の脅威にも関連する情報提供も含んでいるからだ。最近も、モスクワにFBI(アメリカ連邦捜査局の)捜査官が訪れて、私たちは、イスラム過激派の対策で積極的に協力を組んでいくことを合意したばかりだ」


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