2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月3日

 英Economist誌5月4日号の社説は、習近平の言う「中国の夢」の一つはナショナリズムであり、もう一つは、中国共産党の一党支配の継続であるので、中国が法の支配を尊重し、立憲体制を確立するまではまだ長くかかりそうである、と指摘しています。

 すなわち、1793年にマッカートニー卿は、贈り物を携えて当時世界最大の国家であった清朝を訪れたが、清の皇帝は、英国の恭順を嘉みすると同時に、清国は英国の産品は全く必要としないと述べた。英国は、1830年武力を用いて中国に戻り、その後の中国の屈辱が中国革命をもたらすこととなる。

 中国の夢は、アメリカン・ドリームに対応するものならば、それ自体は結構なことであるが、問題は、それに、ナショナリズムと全体主義の匂いがすることである。

 習近平は、過去の指導者のように堅苦しい共産党の表現ではなく、「中国の夢」を平易な言葉で述べ、中国人の感情に訴えた。それは、中国民族の偉大なる復興を主張し、18世紀の清朝への復帰を象徴するものであった。

 習近平の夢は、2つの危険を伴っている。1つは、ナショナリズムである。彼は、「強兵の夢」に言及して軍を喜ばせているが、それが、日本の植民地時代の屈辱に対する報復を意味するのならば、地域の安定に害となろう。

 もう1つは、習は、強兵の基礎は、党の命令に従うことだと言っている。習によれば、ソ連の崩壊は、イデオロギー的正統主義から遊離したために起きた。「中国の夢」は理想であるが、共産党員はより高い理想、すなわち、共産主義、を持たねばならないと言っている。


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