2022年12月9日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年11月6日

»著者プロフィール
著者
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 下のグラフは、ズワイガニ漁獲量の約7割を占める日本海系群(A海域・富山県以西)の漁獲量推移です。緑がメスで、オレンジがオス、青は脱皮直後のズワイガニのオスとなります。今年(22年)は、メスの漁獲期間は11月6日~翌1月10日、オスに関しては期間が長く翌3月20までとなっています。期間が短いメスに、解禁当初は漁獲圧力がかかってしまうことになります。

(出所)水産研究・教育機構 写真を拡大

 日本が主に輸入している国々との最大の違いはメスの水揚げの有無です。日本以外の国々では、メスの水揚げは行っていません。海底に生息するズワイガニですが、水揚げ後に海に戻しても元気に海底に戻ります。そしてメスは卵を産み子孫を残していきます。

 11月の解禁時は、メスのズワイガニはセイコガニと呼ばれ、卵が珍重されます。先の水揚げデータをみると、水揚げ量の約40%を占めています。メスは小さいので、尾数にしていたら相当の数です。もし、これらのメスが産卵していたら資源量にどれだけ貢献していたでしょうか?

ズワイガニの漁獲量が大きく増えているノルウェー

 下のグラフは、日本(青)とノルウェー(赤)のズワイガニの漁獲量推移を示しています。日本の漁獲量は横ばいか減少を続ける一方で、ノルウェーの漁獲量は日本を追い抜き、その差が広がっています。

(出所)農林水産省とノルウェー漁業省のデータから筆者作成 写真を拡大

 グラフを12年からとしているのは、ノルウェーでの漁獲量は「ゼロ」であったためです。今では日本の漁獲量を大幅に上回っていますが、もともとノルウェーにはズワイガニは生息していませんでした。

 日本のズワイガニには、ノルウェーのように大きく増加する気配は「全く」ありませんし、一時的に多少の凸凹があっても資源量は増えません。

 ノルウェーとロシアの北部に位置するバレンツ海。そこでズワイガニが1996年に発見されました。しかしすぐには漁獲を開始しませんでした。バレンツ海は、マダラやシシャモを始め、ロシアとノルウェーの両国が資源管理をしています。ズワイガニの発見後、ロシアでは2011年・ノルウェーでは2012年からと15年以上待って、徐々に資源を増やしながら漁獲を開始しています。

 その結果、今ではゼロだったバレンツ海での漁獲量が、日本のズワイガニの漁獲量を超えています。同漁場でノルウェーもロシアもズワイガニのメスは水揚げしていません。メスを水揚げしてしまうのかどうかが、その後の資源量に大きな影響を与えていることは明確なのです。

 バレンツ海のズワイガニ資源が増えて、漁獲量が増加しているのは偶然ではありません。もし日本で同じことが起きていたら、1996年の時点でこれ幸いと獲り続けただけでしょう。そして資源量がグラフのように増加することは決してなかったことでしょう。その後減り始めると、今度は水温の変化や外国が悪いというお決まりの責任転嫁が始まるパターンが起きていたことが容易に想像できます。ところでこれは、漁業者が悪いのではなく、資源管理制度の問題なのです。

新着記事

»もっと見る