2022年12月4日(日)

Wedge REPORT

2022年9月23日

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真田康弘 (さなだ・やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授

神戸大学国際協力研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構などを経て、2017年より現職。

 日本の漁業補助金には、目的も形骸化し「延命治療」となり果てているものも少なくない。北海道の現場を歩くと、補助金をつぎ込んでも衰退が止まらない、漁村の現状があった。
 『Wedge』2022年10月号に掲載されているWEDGE REPORT「世界からも疑問の声 補助金漬けの漁業はもうやめよう」では、そこに欠かせない視点を提言しております。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
補助金で整備が進む北海道北部・遠別の漁港。漁業者は30人に満たず、つぎ込まれる補助金は漁業者1人あたり2億8000万円である(筆者撮影)

 今年6月17日、世界貿易機関(WTO)閣僚会議は「閣僚宣言」を6年半ぶりに採択し閉幕した。同宣言の目玉の一つとなったのが、「漁業補助金協定」の合意だ。

 そもそも政府による補助金投入は市場による自由な競争を歪めるというマイナスの側面を持つ。漁業についても、補助金がつくならばと皆が競って漁船を大型化するなどして漁獲能力を上げてしまえば、魚を獲り尽くしてしまいかねない。また、不採算にあえぐ漁業者に対する補助金の投入は、短期的には漁業者を救済するが、抜本的な解決にはつながらない。

 ところが漁業補助金協定の交渉で、日本は「禁止される補助金は、真に過剰漁獲能力・過剰漁獲につながるものに限定すべき」と規制に消極的であり続けた。結果、合意された補助金協定でも、乱獲された資源に関する漁業への補助金は禁止(第4・1条)されたものの、その補助金やその他の措置を通じて資源が持続可能な水準に回復するよう目指されている場合には、補助金供与が許される(第4・3条)とされるなど、重要な例外が設けられた。

 日本が漁業補助金の規制に難色を示し続けたのは、日本の漁業が補助金依存体質であることに起因している。漁業経済学が専門のカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のラシード・スマイラ教授らの研究によると、2018年の日本の漁業補助金は28.6億㌦にのぼり、そのうち3分の2を超える21.1億㌦が乱獲を引き起こすまで漁業生産能力を向上させ得る「悪い補助金」だと推定している。この悪性補助金の額は、中国に次いで多い。

日本は中国に次いで乱獲を
助長し得る補助金を出している
(出所)学術雑誌『Marine Policy』の論文『Updated estimates and analysis of global fisheries subsidies』の分析からウェッジ作成
(注)2018年のデータ

 実際、22年度の水産予算総額(21年度補正含む)3201億円のうち、約3分の1にあたる1019億円は漁業者への不漁時の減収補填や価格上昇時の燃油への補填金などにより構成される「漁業経営安定化対策」であり、さらに約3分の1にあたる1134億円は漁港の整備などに充てられる公共予算だ。そのうえ約281億円は「漁船リース事業」と呼ばれる、国が漁業者の漁船取得費用の半額を補助するというスキームに充てられている。

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