補助金は「薬」にもなり得るが
問題はその使い道
「漁業補助金が全て悪というわけではないはずだ」という日本の主張は、確かに理屈としては通っている。例えば漁業者にお金を払って操業時の詳細なデータを取ってもらい、それを資源調査に役立てるなら、それは資源管理に資する補助金といえる。
「漁船リース事業」も、過疎に悩むわが国の地域政策として適切であり得る。この事業は漁業で中核的な役割を担うであろう若手でやる気のある漁業者をサポートし、新たな船での操業で所得を向上させ、漁業の活性化を図るという目的で始められている。
今回筆者が取材した北海道の離島、焼尻島の高松亮輔氏は、道内で「漁船リース事業」を初めて申請した漁業者だが、申請当時は東日本大震災により多数の漁船が被災し新船建造需要が急増したことなどもあり、沿岸用の小型漁船でも4000万~5000万円と、船価が急騰していた。まだ30代前半だった高松氏はこの事業を利用、漁船を取得した。島民による資源管理に成功している焼尻島では、漁業者の収入も概ね安定しており、高松氏の経営も順調である。補助事業としては所期通りの成果を挙げたと言える。
しかし、「制度を利用した私が言うのもなんだが、漁船リース事業は罪の方が深い」と高松氏が指摘するように、補助金には負の側面がある。造船所やエンジン、計器類のメーカーが「どうせ半分は税金だ」と足元を見て値段を吊り上げてしまうなどして、船価がさらに高騰したというのである。現在、同等の漁船は……
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