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BBC News

2022年11月13日

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ウクライナ南西部ヘルソン州の州都へルソンからロシア軍が撤退したのを受け、市内に入ったウクライナ軍と住民の祝賀ムードが続くなか、ウクライナ政府関係者は「まだ戦争が終わったわけではない」と警告している。ヘルソンの近くでは主要な橋に加え、主要なダムの一部が破壊された。

ウクライナ国防相顧問のユーリ・サク氏はBBCに対し、「気を緩めるにはまだ早すぎる」と話した。

サク氏はBBCラジオ4に対して、「ヘルソンは解放すると、常に確信していた。そして、今ではロシア側がこの戦争に勝つのは無理だと考え始めていると、こちらは確信している。政府や軍の随所でパニックしているのが見える。プロパガンダ・マシーンがパニックしているのが見える」と述べた。

「けれどももちろん、今この時はとても大事な瞬間だが……戦争終結にはまだまだ程遠い」とも、サク氏は話した。

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ヘルソンを今年3月から占領していたロシア軍が撤退完了を発表した11日、ウクライナ軍がヘルソン市内に入り、歓喜する住民に迎えられた。ウクライナ政府幹部は、11日午後4時(日本時間同11時)過ぎには、ウクライナ軍はヘルソンをはじめ、ドニプロ川西岸の大部分を「ほぼ完全に掌握した」と話した。

ロシア政府は、ヘルソン周辺から兵士約3万人、装備や武器約5000点を後退させたと発表した。

ウクライナではヘルソンをはじめ、首都キーウや南西部オデーサなど国内各地でも、同様にヘルソン解放を祝っている。


ロシア軍は川を渡り有利な態勢に?

ヘルソン市長のロマン・ゴロヴニャ補佐官によると、市内では水道水や医薬品、食料などが不足しているものの、近隣ミコライウから支援物資が届き始めているという。

ゴロヴニャ氏は、開戦前に人口32万人だったヘルソン市の住民は現在7~8万人だと話した。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「ヘルソンから逃げる前、占領者たちは不可欠なインフラをすべて破壊していった。通信、給水、暖房、電気、すべてだ」と話した。大統領は、ヘルソン周辺にロシア軍が残していった大量の地雷やわなを撤去する、大規模な作業にとりかかっていると述べた。

州都の電力復旧がいつになるかは不明だが、ヘルソン市の周辺では数日中に復旧の見通し。停電のため市内の店舗は主食のパンを作れずにいた。

ヘルソン一帯ではウクライナのテレビ放送が再開した。多くのウクライナ人にとってはテレビがニュースを得る主要手段。

国防省のサク氏や、キーウ州のオレクシー・クレバ知事は、ロシア軍のミサイル攻撃が続く危険を指摘。ロシア軍はこのところ、ウクライナのエネルギー・インフラを次々と破壊し、国内の発電能力に深刻な打撃を与えている。

クレバ知事はBBCに対して、「1カ月以上前から、ウクライナの平和な集落が徹底的に砲撃されてきた。キーウ州への砲撃の危険は高い」と話した。

他方、ウクライナ国家安全保障・国防会議の元議長、オレクサンドル・ダニリュク氏はBBCに、ヘルソンから撤退したロシア軍部隊がドニプロ川を渡ったのは「左岸(東岸)で徹底的な防衛態勢に入るため」で、「それによってロシア軍は有利な状態になる」と警告した。


BBCのジェレミー・ボウエン国際編集長は、ロシア軍は撤退を決めたことで、「勝つことのできない戦闘で死んだかもしれない兵士の命を守る」ことに成功したと指摘。そうして生きながらえた兵士を、今後別の戦場に送ることができるようになったという。

イギリス国防省は12日、ロシア軍が撤退作戦の一環としてドニプロ川を渡る橋や鉄橋を破壊した「可能性はきわめて高い」と指摘。11日には、ドニプロ川にかかる主要な渡河ルートのアントニフスキー橋が部分的に崩落した様子を捉えた映像が浮上した。橋がどのように破壊されたかは、はっきりしていない。


ダムの一部破壊

12日午前には、ヘルソン市から北東約58キロにあるノヴァ・カホフカ・ダムが破壊される映像が浮上した。

米宇宙企業マクサー・テクノロジーズは自社の人工衛星画像から、「ダムと水門の一部が破壊された」とツイートした。同社の人工衛星画像では、ダムを通過する道路と鉄道がともに寸断された様子が見える。破壊の原因が何か、BBCは独自に検証していない。

BBCが内容を検証した新しい動画では、ダムの片側で巨大な爆発が起きたのが見える。

ウクライナとロシアの双方はこれまで、お互いがダムに爆発物を仕掛け、周辺一帯を冠水させるつもりだと非難しあってきた。


撤退開始は10月下旬からか

イギリス国防省は、ロシア軍のヘルソン撤退は早くて10月22日から始まり、住民避難を装いながら部隊を移動させた可能性があるとしている。

ロシアは9月末にヘルソンをはじめとする4州の「編入」を一方的に宣言。プーチン大統領はヘルソンなど4州を「永遠にロシア」だと力説していた。しかしロシア国防省は9日までに、州都ヘルソンからの撤退をロシア軍に命令。同軍のウクライナ総司令官、セルゲイ・スロヴィキン将軍は、ヘルソン市への補給を持続できなくなったと話した。スロヴィキン司令官は国営テレビで戦場の様子を説明した上で、「ドニプロ川に沿って防衛線をまとめる方が、まともな選択肢だ」と話していた。

ロシア政府は12日、ヘルソン州の州都を一時的に港町ヘニチェンスクに移動させると発表した。ヘルソン市から南東に200キロ以上離れた場所で、ロシアが2014年に併合したクリミアに近い。

ロシアの国営インタファクス通信によると、現地当局はすべての行政事務所をはじめ、「彫像や歴史的文物」をドニプロ川西岸、つまりヘルソン市とその周辺から避難させたという。同通信によると、この地域から避難した人数は11万5000人に上る。

イギリスのベン・ウォレス国防相は、ヘルソン撤退はロシアが「またしても戦略的な失敗」を重ねたことを意味すると述べた。

「2月にロシアは、ヘルソンを除いて、主要な目標をまったく制圧できなかった。それを手放すことになった今、ロシアの一般市民はこう問いかけるしかないだろう。『いったい何のためだったのか』と」

(英語記事 Ukraine war: Celebration in Kherson - but war 'far from over'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63612836

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