2024年5月2日(木)

Wedge REPORT

2022年12月7日

 サッカー日本代表は、FIFAワールドカップ・カタール大会決勝トーナメント1回戦で、クロアチアにPK戦の末に敗れた。初めてのベスト8は逃したものの、予選リーグでの強豪ドイツとスペインを撃破した試合は間違いなく歴史に残るものだ。日本サッカーは確実に進化しており、今大会を糧に新たなステージへと駆け上がることが期待できる。成長するのは選手だけではない。選手の〝足元〟を支えるシューズ開発の現場を追ってみたい。

ベスト16で敗れたものの、日本代表は世界に驚きを与えた(森田直樹/アフロスポーツ)

サッカーシューズだから求められる技術

 「走る時のグリップ感がもっと欲しい」「履いた時のフィット感が足りない」「ボールにはやわらかくタッチできる感覚が欲しい」――。トップ選手たちがスパイクシューズを着用しながら思い思いの言葉を口にする。

 「選手たちの言葉は、感覚的な部分が大きい。そうしたニュアンスとも言えるものを数値化、言語化しながら新たな機能を提案し、良いプレーを引き出すのが私たちの仕事」。アシックス(神戸市中央区)開発部フィールド開発チームの新堀正博氏は語る。

 同社は1999年から展開する「DS LIGHT(ディーエスライト)」を中心に、トップ選手から部活動、子ども向けのサッカーシューズを企画・製造している。W杯予選リーグ第2戦で先発したサイドバックの山根視来選手(川崎フロンターレ)もこのシリーズのトップモデル「DS LIGHT X-FLY4」を使っている。

アシックス「DS LIGHT X-FLY4」のW杯カラー「GLORY GOLD COLLECTION」

 シューズ開発で同社が特に心がけているのが選手のプレースタイルや環境に合わせたものを科学的な知見から提供することだ。「サイドバックとしてスプリントが多い山根選手は走り出す時の感覚を大事にする。DS LIGHT X-FLY4は、地面を蹴り上げる時の力のロスを少なくできるよう足の曲がり方から分析し、スタッド(靴底の突起)の位置を調整した」と新堀氏は話す。

 サッカーシューズの競技への役割は、他のスポーツよりも幅広い。走るだけでなく、ボールを蹴るという役割を担っているためだ。「ボールを蹴る」と言っても、ドリブルやパス、シュート、トラップと、それぞれの場面でボールとの接し方は異なる。プレーする場においても、天然芝や人工芝、土、屋内などさまざま。雨の日も試合が行われるため、そうした環境の変化にも対応する必要がある。


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