2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2022年12月7日

国内で高まる国内メーカーへの期待

 こうした日本人のさまざまな要望に応えるプレーヤーとして、国内メーカーが期待されつつある。

 日本のプレー環境は多くが土のグラウンドで、天然芝が多い欧州と異なる。雨が多い高温多湿であることも特徴で、それに合わせたシューズ選択が求められる。また、経済成長とプロリーグ創設から30年という月日が経過した日本では、消費者の物への要望も高いものとなっている。

 これに対して、ナイキやアディダスのような海外メーカーの動きが鈍くなっている要因がある。矢野経済研究所「スポーツ用品市場に関する調査(2022年)」では、サッカー・フットサルの国内出荷市場規模において、17年の614億円から、22年は502億8000万円へと縮小すると予測されている。海外メーカーが日本の細かなニーズに応えるうま味が少なくなっているのだ。

 実際に最近では、日本の中高生を中心にミズノのスパイクが人気となっているという。それは、「湿気をとるシュードライヤーやメンテナンス用のクリーム、ほどけにくい紐と、日本のプレー環境にあった付属品も充実しているため」と総合スポーツショップ担当者は話す。

最新技術と人の経験と

 シューズ開発は、素材選びも重要だ。ボールに接触するアッパー部分は、カンガルー革と人工材がある。カンガルーは、やわらかくボールとのタッチ感が柔らかい、人工は足へのホールド感があり走る時のブレが少なくなる。靴の中の素材についても、軽量化を求めるのか、柔らかい履き心地を求めるのかによって変わってくる。

ソールにはメーカーと選手たちのこだわりが込められている

 ソール(足の裏)は特にこだわりが求められ、走り出した際の地面への抵抗力、蹴り出す力の伝わり方、切り返す際に止まれるかなど、見極めるべき機能は大きい。ソールの硬さだけでなく、どのように屈曲するか、走る中での足の裏の接地はどこになるかを分析した上でスタッドの位置を決める。

 こうした選手の要望に応じた細かな機能性の追求を可能にしているのが、最新のデジタル技術だ。求める機能に応じたソールの硬さや屈曲性を推計し、そうしたデータを基にしたシューズをデジタル設計し、数種類のサンプルを作成する。

 選手たちはそれを実際に履き、走り、ボールを蹴る。この際にカメラとマーカーを用いて体の動きを3次元で再現するモーションキャプチャー(動作分析)も用いて、選手個人の感覚だけでなく、それぞれの動きをデータ化する。最新技術を活用することによって、試作の数を減らし、より選手が求めるものに近づけるようになる。

 もっとも、「数値と選手の感覚が必ずしもイコールになるわけではない」と新堀氏は話す。「そうした場合は、どの部分の機能やデータがキーポイントになっているか洗い出す」という。やはり、最新の技術だけでは〝良いシューズ〟を作ることはできず、人による経験と知識、選手との会話が必要というわけだ。


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