2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月12日

 硬軟の策を繰り出し、時間をかけて事態の沈静化を図っていくという事であろうが、習近平の無謬性(infallibility)は傷つくだろう。習近平を共産党の核心とし、唯一の指導者にすることは不都合だという党内での意見も出てきかねないと思われる。

傲慢の現れたる党規約の「習近平思想」

 鄧小平が最高指導者の任期を2期10年までと定めて集団指導体制を作ったことは、先見性に満ちた賢明な制度設計であったと評価できる。これをひっくり返した習近平のワンマン体制は脆弱性を抱えると考えられたが、それが早くも出てきたということかと思われる。

 習近平が党規約に「習近平思想」を書きいれたことは傲慢さの現れであると考えられる。「習近平思想」とは何なのか、今なおはっきりしない。中華民族の夢の実現という民族主義的願望と強国建設路線であることははっきりしているが、マルクス主義の「万国の労働者よ、団結せよ」との階級を重視した国際主義とは程遠いのに、マルクス主義者を自称するなど、支離滅裂であるように思われる。

 中国の指導者が鄧小平のような賢明さを持たないこと、中国経済のさらなる発展よりも自己の政治的権力の増大に熱心であることは、日本にとりそれほど憂うべきことではない。中国は今経済力で 2033年には国内総生産(GDP)で米国を凌駕すると言われているが、その後2050年には、少子高齢化などの影響で米国に抜き返されると日本経済研究センターは予測している。が、このゼロコロナ政策に伴う混乱、大手ITへの弾圧政策、中国の人口動態などを見ると、中国経済はもっと早く減速する可能性が高いと考えられる。

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