10月に開かれた第20回中国共産党大会を受け、中国の台湾への軍事的圧力はさらに高まると見られる。ウォールストリート・ジャーナルの10月27日付け解説記事‘Taiwan Braces for ‘Grim’ Times After China’s Xi Extends Power’は、この状況を詳述しており参考になる。主要点は次の通り。
・台湾の政治・軍事指導者にとり、台湾海峡の見通しはますます不吉に映っている。
・中国共産党は、以前は全ての中国国民の一体性強化を求めていただけだったのを、「台湾の独立に強固に反対する」との強化した文言を含むよう党規約を改正した。
・共産党は中国の政治・軍事指導部を入れ替え、台湾に詳しい軍司令官(中国軍東方戦区司令部の何衛東・元司令官)を中央軍事委員会副委員長に抜擢した。この人事は異例の昇進だ。
・この変化は、北京が台湾により強硬になる一方であることを示唆する。
・台湾の邱国正国防部長(国防相に相当)は、台湾海峡の状況は「厳しいだけではない」、「少しでも注意を怠れば、深刻な事態になる可能性がある」と述べた。
・中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、「われわれは、歴史上のいかなる時よりも、中国民族の偉大な復興という目標に近づき、自信を持ち、実現する能力を獲得している」と述べ、「外部勢力によるいかなる干渉も、『台湾独立』勢力による分離主義行為も断固として打ち破る」との中国の決意を改めて表明。
・ナンシー・ペロシ下院議長の8月の台北訪問後、中国側は、台湾周辺での実弾演習を実施し、何将軍の指揮により模擬封鎖で台湾を包囲した。邱国防部長は、これらの演習の成功が何将軍の大幅昇進の一つの理由だろうと推測する。
・劉結一台湾事務弁公室長が共産党中央委員会から排除されたことも、台湾政策の変化の可能性を示唆する。劉の失脚は台湾事務弁公室の働きぶりへの習の不満と読める。台湾企業の誘致や台湾との個人的つながりを通じて台湾の支持を得ようというのでは、台湾の中国に対する否定的な態度をほとんど変えることができず、台湾が「一国二制度」を受け入れないことは明白だ。
・中国におけるゼロコロナ政策と経済低迷への国民の不満が高まっており、北京は14億の国民の目を国内問題からそらすために両岸問題を使うかもしれない。
・邱国防部長は10月24日、台湾軍は戦争に備え続けると述べた。台湾軍は徴兵期間の延長を模索しており、年末までに決定が発表される予定である。一方、台湾軍は実弾射撃訓練を増やしている。
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中国共産党大会が終わって、習近平は無期限の国家主席にとどまることとなった。
「台湾への武力行使の放棄は約束しない」というのが、共産党大会初日での習近平の活動報告であった。会場では、この部分を習近平が発言すると、5秒間にわたって、拍手がなりやまなかったという。実際の党大会最終日には「断固として台湾独立に反対し、抑止する」との文言が書き込まれた。