――カウンセリングをする際に最も注力するのは、どのようなことでしょうか。
松本:まず、相談者に自由に語ってもらい、カウンセラーとして相談者が困っている内容や気持ちの“理解”を目指します。その際、質問を投げかけていくなかで、上司や人事などにも理解してもらえるように、自分を語ってもらうことが重要だと思っています。
相談者の話を理解したら、理解したことを相談者に伝え返すことが、とても大事です。上司が自分を理解してくれない状態が長く続いている人は、どうせ自分は誰にもわかってもらえないという思考に陥りがちです。理解した内容を相談者に伝え返し、その内容が正しい場合、相談者は「自分は理解をしてもらえた」と納得を示してくれます。逆に理解できない場合は、理解できないことを率直に示すことも必要と思っています。何故、理解されないのかを説明し、理解できるような取り組みを進めていきます。
うつを防ぐポジティブ思考とアプローチ
―― 事業活動を教えてください。
松本:契約企業の社員や家族からの主にメンタル面での相談、職場復帰支援、研修、管理職のサポート、ストレス診断などを業務内容としています。EAP契約数は約180社、年間相談者数は6000人。面談のほか電話、メールなどでも相談をしており、すべて含めると相談件数は5万件になります。カウンセラーは約40人で、すべて臨床心理士か精神保健福祉士の有資格者です。契約企業は、大企業もあれば従業員数が300人未満の中小企業もあります。カウンセラーは全員常勤社員ですので、忙しい管理職でもコンタクトが取りやすい点が、他社との違いです。
―― 事業目標や今後の展開などは。
松本:私たちの仕事の多くは、メンタルヘルス不調に陥った人たちを健康な状態にまで導くことで終結します。その意味で目標とするのは、メンタルヘルス不調者がなくなり、メンタルヘルス対策が不要となる社会を実現させることです。ただし、EAPは元々、パフォーマンスを向上させることを狙いとして生まれたビジネスです。いまはメンタル不調者への対策が中心になってしまいました。もっとポジティブな事業へと変革させ、企業の健全な事業活動を支援する存在になっていきたいと思っています。
そのためにも予防に力を入れていきます。健康だがリスクファクターの高い人、特に異動、配置転換、昇進などでバランスを崩さないよう予防する取り組みが大事です。予防対策のキーワードは“有意味感”だと思っています。仕事やその他の問題できつい状態にあっても、有意味をもっている人は健康を維持していけます。配属に際しては、上司と仕事の意味を語り合うこと。この仕組みや方法を教育研修などの場で伝えています。社員のネガティブな状態に対するアプローチでなく、意味を語るポジティブなコミュニケーションを通して相互理解が進むことで、社員の抑うつ状態を防ぐことができると考えています。
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