
アメリカとドイツ両政府は25日、ウクライナに戦車を供与すると発表した。アメリカは「M1エイブラムス」31台を、ドイツは「レオパルト2」14台をそれぞれ送る。
ドイツはさらに、欧州各国がドイツ製の戦車をウクライナに供与することも認めると表明した。
ウクライナはここ数カ月間、西側諸国に対し、兵器など軍用物資を送るようはたらきかけていた。
ドイツとアメリカの発表についてウクライナは、ロシアの侵攻開始から1年近くがたった今、ウクライナ軍が勢いを取り戻し、ロシアが占領している地域を奪還するターニングポイントになると述べた。また、ロシアの春の侵攻を食い止める手助けになるかもしれないと指摘した。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「勝利への重要な一歩」だと述べ、「自由な世界はきょう、ウクライナの解放という共通のゴールに向かって、これまでにないほど団結した」と語った。
一方のロシアは、米独の動きを「露骨な挑発行為」だと非難。ウラジーミル・プーチン大統領の報道官は、「これらの戦車はすべて燃やされる。ただただ高額なだけだ」と語った。
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ジョー・バイデン米大統領はホワイトハウスでの記者会見で、「プーチンはヨーロッパとアメリカが決意を弱めることを期待していた。彼は最初から間違っているし、これからも間違い続ける」と述べた。
「我々はウクライナに、戦車が戦場で持ちこたえられるよう、必要な部品や設備も供給する。これはウクライナを助け、ウクライナの領土を守るためであり、ロシアにとっては攻撃を受ける脅威にはならない」
また、ウクライナの戦車大隊は通常、31台の戦車から成るため、この数で合意したのだと説明した。
バイデン政権はこれまで、重量のある戦車M1エイブラムスの納入は困難で、維持費が高く、ウクライナ軍にとって運用が困難だと主張していた。今回の決定は、そうした立場を一転させた格好だ。
アメリカ製のこの戦車は世界で最も現代化されたもので、運用には長い訓練が必要とされる。今回発表された4億ドル(約520億円)規模の支援パッケージには、戦車が動かなくなった際に使う牽引(けんいん)車8台も含まれている。
専門家は、M1エイブラムスは米軍の備蓄からではなく民間の契約企業から購入して送られるため、戦場に到着するまでに数カ月かかる可能性が高いと指摘している。
一方、ドイツ製のレオパルト2は備蓄から供給されるため、2~3カ月での到着が見込まれている。レオパルト2は、入手可能な戦車の中でも最も効果的なものとみられている。
ウクライナへの戦車供与をめぐっては、数週間にわたって外交論争が起きていた。ドイツはこの件で国際的な圧力を受けていたが、報道によると、アメリカも戦車を供与するという条件で合意したという。
匿名のアメリカ高官は25日、両国が 「良い外交的会話」に参加したことが流れを変え、「ドイツの安全保障政策の並外れた転換 」に貢献したと述べた。
ドイツのオラフ・ショルツ首相は連邦議会で、この転換に懸念を示している国民に、自分を信じてほしいと訴え、ウクライナを支援するための正しい選択だと語った。
ショルツ首相は、ドイツのこれまでの消極姿勢について、「我々がただただ流されなかったのは正しかった」と述べた。その上で、今回の戦車供与は「第1段階」だとし、2大隊の編成が目標だと語った。
ドイツ政府によると、ウクライナ兵はドイツで間もなくレオパルト2の運用訓練を受ける。バイデン米大統領も、ウクライナ軍へのアメリカ製戦車の訓練を「早急に」行うと述べたが、時間がかかるとした。
西側からの戦車の獲得は、ゼレンスキー大統領にとって外交的な大成功となるが、同大統領は24日、ロシアに勝つためには少なくとも300台の戦車が必要だと述べた。
ドイツの決定により、欧州各国は保有しているレオパルト2をウクライナに供与できるようになった。ドイツは最終的に約90台が戦場に送られることを望んでいる。
25日にはノルウェーが、保有するレオパルト2をウクライナに送ると発表したが、具体的な台数は明らかにしていない。
(英語記事 US joins Germany in sending tanks to Ukraine/Ukraine welcomes German tank move as 'first step'')