2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月22日

 今年2月23日、米メディアは、米軍が台湾軍の訓練のため、台湾に派遣してきた米兵を今後、数カ月間で4倍以上に増やす方針である、と報道した。昨年1年間の30人から100~200人に増員されることが決定した趣である。

 さらに、「米国防授権法」(昨年12月に採択)がバイデン大統領の署名により成立した。そのなかで台湾に対しては、北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要同盟国と同等の待遇を与え、台湾が優先的に米国から軍事物資を取得できることを決定した。これらの新しい決定はギャラガーの主張と相呼応するものである。

 最近の台湾のメディアにおいて「疑米論」という言葉がはやっているようだ。「台湾は最後には、米国に見捨てられるのではないか」という意味の悲観論を意味する言葉だが、これは、たぶんに中国による心理作戦(認識戦)の影響を受けた用語ではないかと思われる。ギャラガーの本論考は、このような「疑米論」を全面的に否定するものである。

武力行使を排除しない中国の姿勢は変わらず

 最近、新しく中国外相に就任した秦剛は、「台湾問題は米国が超えてはならない最初のレッドラインだ」と発言し、「平和統一に向けた最大限の努力をするとともに、あらゆる必要な措置をとる」と述べ、接近する米台を牽制する意図を明白にした。一見「平和統一」といえば、柔軟かつ穏健な政策かと思われるが、その実、いかなる事態においても「武力行使を排除しない」という点や台湾問題は中国共産党にとっての「核心問題中の核心」であるという本来の立場に変わりはないことは、言うまでもない。

 台湾においては、昨年11月に行われた統一地方選挙において民進党・蔡英文政権は国民党に大敗した。その後、今年に入ってから中国は夏立言・国民党副主席の訪中を受け入れたが、国民党は台湾の中では、どちらかと言えば、中国に近い立場をとっている。そのこともあり、中国は台湾問題について、これまで取ってきた高圧的姿勢からより穏健な姿勢に切り替えつつあるようにも見えるが、その背後には、硬軟両様の姿勢で台湾社会を分断化しようとする中国の本音が見て取れる。

   
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