2月9日付の米ワシントン・ポスト紙(WP)に、同紙コラムニストのファリード・ザカリアが、「次の気球のような危機は萎ませるのがより難しいだろう」との論説を書いている。
一般教書演説でバイデンは中国の気球事件に一行しか言及しなかったが、この事件からの波及を封じ込めようとの努力を示唆する。
われわれは、経済的に深く相互に連結されている2カ国の増大する地政学的対決を見ている。この偵察気球事件の中で、今週は米中貿易額がこれまで最大の 6900 億ドルになった。これは、トランプ政権以降の対中関税と、それへの中国の対米報復関税にもかかわらず達成された。ハイテク製品輸出を規制するバイデン政権の新しい規則とも逆方向である。
われわれは中国とは二つのレベルで作用している。一つには、地政学レベルで緊張は急速に高まっている。もう一つは商業レベルで、これは政府ではなく米中の消費者や企業によって決められている。この関係は相互依存である。この二つの領域は、目的が逆であるのに引き続き前進できるだろうか。そうはならない可能性が高い。
地政学的緊張は迅速に大きくなる可能性がある。今週、気球よりもっと意義あるニュースがあった。核兵器を監督している米戦略司令部は、議会に中国は米国よりも多くの大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射機を持っていると通知した。米中関係が悪化する中、中国は核兵器庫を急速に建設する方向に動いている。
昨秋の米国防省の報告書によると、中国の核弾頭は、2035 年までに3倍増以上になるという。その時にわれわれは3大国がそれぞれ大きな核兵器庫を持つ世界にいるだろう。このうちの二つ、中露は同盟国で、主として米国に照準を合わせているだろう。
その上、台湾がある。われわれは、台湾に侵攻または台湾を封鎖する中国の軍事力の長期的建設に直面している。もし下院議長マッカーシーが訪台し、挑発的に台湾独立への支持を表明すれば、確実に引き金が引かれる危機を含め、潜在的に短期的危機にも直面している。台湾は2024年に総統選挙を行う。今、ほとんどの台湾人はすぐの独立を欲しておらず、当面は繁栄を可能にした曖昧な現状維持を好んでいる。しかし北京のいじめが強くなれば、それも変わりうる。
米中は米露と違い、軍備管理合意を持たず、安全保障についての交渉もしていない。危機管理のための軍間対話もない。経済チーム同士の継続的討議もない。もし米中間の次の危機が気球よりも大きいと、それを萎ませる事はずっと難しいかもしれない。
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このザカリアの論説が指摘している諸点は重要であり、米中関係のマネージメントは今後より難しくなることは間違いがないと思われる。