2024年5月5日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月28日

 偵察気球事件をめぐって、オースチン米国防長官が中国の国防長官に電話をかけたが、中国側が電話に出なかったと報じられている。こういう対話の拒否は遺憾なことである。米中間では、誤解が生じないように十分な意思疎通をしていくことがアジア、太平洋地域での紛争を処理するために重要である。

米中間に必要な「ガードレール」

 米国は米中間の衝突回避のための「ガードレール」の必要性を強調しているが、軍の間の意思疎通はガードレールの一要素として重要である。誤解から衝突を起こし、それを内外の事情から収められなくなるというのが最も馬鹿げているという意識を米中双方が持つべきであろう。

 米・西側と中国関係については、時間とともに、米・西側が有利になると考えられる。その理由は、中国はその経済成長のピークを既に迎えているか、まもなく迎えると思っているからである。中国はゼロコロナ政策で経済成長が減速したうえ、不動産のバブルの崩壊もある。それ以上に長期的に打撃になるのが人口の縮小とその構成の変化、少子高齢化である。中国の日本化などと言われ、いい気分はしないが、合計特殊出生率は日本を下回り、上向く気配はない。

 国際的状況も、ロシアが中国の「制限のない戦略的パートナー」であるが、ロシアは間違った選択でウクライナ戦争をはじめ、苦境に陥り、同盟国として頼りにならず、重荷でさえある。ザカリアは、中露で組んで米国と対抗する世界と言っているが、必ずしもそうはならないし、長期的にはプーチン後のロシアの民主化も考えられる状況にある。

 台湾については、総統選挙が2024年にある。国民党が勝てば、北京は武力行使よりも話し合いで中台関係を何とかしようとして、2027年までの武力行使はなくなるだろう。民進党が勝てば、今の現状維持政策が継続されることになろう。ケビン・マッカーシー米下院議長は、台湾独立支持などを言って北京を挑発しないほうが良いのかもしれない。

 要するに、台湾側は時間は我に有利と考え、中国を挑発することを極力避けていくことが肝要ではないかと思われる。

   
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