2024年12月10日(火)

世界の記述

2023年3月8日

 台湾をめぐる米中競争が激しさを増す中、米台関係が親密度を増している。2月21日には、台湾の呉釗燮外相と国家安全会議(NSC、国安会)の顧立雄秘書長が、米バージニア州の米国在台湾協会(AIT)本部を訪れ、米国務省や国防総省の高官と非公開の会合を行った。

 AIT本部は、首都ワシントンとポトマック川を隔てた「ベルトウェー」地区にある。台湾外相の事実上の米首都訪問となるが、これは1979年の米台国交断絶後初めて。米国は、台湾の正副総統、行政院長、国防相、外相の首都訪問を禁じてきたが、今回、外相の訪問が解禁された。

 呉外相と顧秘書長は、台湾の駐米代表、蕭美琴氏に伴われて21日午前9時35分、AIT本部に到着。ジョナサン・ファイナー米国家安全保障担当副大統領補佐官、ウェンディ・シャーマン米国務副長官、ダニエル・クリテンブリンク国務次官補、米国防総省のエリー・ラトナー・インド太平洋安全保障担当国防次官補、マイケル・チェイス国防副次官補(中国担当)が参加した。

 台湾の中央通信社によれば、会談は7時間に及んだ。呉外相と顧秘書長は、それぞれ米留学で博士号と修士取得しており、通訳なしで突っ込んだ会談が行える。

 会談はメディアの取材を避けながら、半ば隠密に行われ、詳しい内容は明らかになっていない。クリテンブリンク国務次官補らは会談後、記者会見で、米中関係につき語り合ったと述べた。また、台湾メディアの質問に対し、米台の安全保障協力に関し話し合われたことを否定しなかった。

台湾では、中国に対する民意の姿勢は揺れ動いている(ロイター/アフロ)

蔡総統訪米を予測する声も

 クリテンブリンク国務次官補は、台湾側と今回同様の会談を定期的に行うと述べた。さらに高い地位の台湾高官の訪米も予想されている。民進党の元立法委員(議員)、郭正亮氏は、蔡英文総統が今年7~8月に米国を訪問するとの見通しを、自身のユーチューブの番組で示している。

 郭氏によると、蔡総統は、中南米諸国を訪問した帰り、トランジットの名目で米ニューヨークの空港に降り立ち、母校のコーネル大学で講演する可能性があるという。故・李登輝元総統も1996年3月の台湾初の総統民選を翌年に控えた95年6月、米国を訪れ母校のコーネル大学で講演している。

 今年8月には、米国のマッカーシー下院議長が訪台する可能性があり、そうなれば中台関係の緊張激化は必至。蔡総統は、下院議長の訪台前に米国訪問に踏み切るとみられるそうだ。

 米国は、台湾へのてこ入れを余り隠さなくなっている。米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は23日、米軍が台湾駐留の部隊員を30人から100~200人に増やす計画だと報じた。増派されるのは特殊部隊と海兵隊員で、台湾軍兵士の訓練に当たり、台湾の自衛力強化を応援する。


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