2023年の台湾経済は、暗雲が漂っている。経済の大黒柱である輸出は、中国の「ゼロコロナ」で大幅に減った。米連邦準備理事会(FRB)に追随する台湾中銀の利上げが、景気を冷やし始めている。
わが世の春を謳歌していたテック企業も、一時の人手不足から一転、人員整理すらうわさに上る。内需回復に期待がかかるが、収入減少、物価高、住宅ローン金利上昇の三重苦で消費の力は弱い。
輸出二桁減の衝撃
台湾財政部が12月に発表した、台湾の11月の貿易統計で、輸出が前年同月比13.1%減の362億3000万ドルと二桁の落ち込みとなり国民に大きな衝撃を与えた。下降幅は16年2月以降の7年間で最大。12月も8~12%の減少となる見通しだ。
台湾の5大輸出相手国・地域のうち、日本の前年同月比15%増を唯一の例外に、中国・香港、東南アジア諸国連合(ASEAN)、米国、欧州連合(EU)は4.5%から20.9%のマイナスとなった。最大の下げ幅となったのは、シェア37.5%の輸出相手である中国・香港だった。
台湾紙の工商時報によると、中国・香港の輸出の下降幅は、13年以降で最大。台湾が輸出増のチャンスと期待していた、中国本土で毎年11月に行われる、インターネット通販の大型商戦「独身の日」も空振りに終わった。もっとも、台湾が頼みとしていた、米国の年末商戦の一つで、感謝祭翌日の「ブラックフライデー」も輸出全体を牽引する力はなく、対米輸出も11.3%減と16年以降で最大の下げ幅を記録している。
11月の輸出を製品別にみても、5大商品である「金属」、「ゴム・合成樹脂」、「電子部品」、「化学」、「機械」がすべて前年同月割れ。台湾の花形産業で、半導体など「電子部品」は
42カ月続いた拡大がついに終わり、前年同月比4.9%減となった。「電子部品」も対日輸出だけが前年同月比15%の大幅増だった。
財政部によれば、ウクライナ戦争の影響による世界的な物価上昇や、主要国の金利引き上げにより各国で消費や工業生産が低迷。世界的な半導体需要拡大による恩恵を打ち消した。
中国の新型コロナウイルス対策の動向や、米中のハイテク分野での競争も台湾の輸出を成約する要因だ。どちらも短期的な終息は見込めないだけに、財政部も懸念を深めている。