2024年4月19日(金)

世界の記述

2023年1月11日

 台湾内政部の12月30日の発表によると、第3四半期(7~9月期)に中所得層の月間可処分所得に占める住宅ローンの月間返済額の割合「住宅ローン返済負担率」は40.55%に上昇した。前期比0.93%、前年同期比3.65%の上昇で、40%を超えたのは初めてだ。

 内政部によれば、台湾大手5銀行平均の住宅ローン金利は、1.597%から1.721%に上昇した。第3四半期は、台湾の中位の住宅価格も、前期の850万台湾元(約3670万円)から860万元に上がった。金利と住宅の上昇がダブルパンチとなって住宅ローン返済負担率を押し上げた。

 物価の高まりも家計を苦しめている。行政院主計総処が1月6日発表した、12月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.71%。22年通年では2.95%で、3%に達しなかったが、08年の3.52%以来の高さ。生鮮食品やエネルギーを除くコアCPIは12 月が2.71 %、22年通年は2.6%だった。

 台湾の家計が収入減、住宅ローン金利の上昇、物価高の三重苦に直面していることは、世論調査でも明らかだ。

消費者信頼感指数は13年ぶり低下

 国立中央大学台湾経済発展センターが12月27日に発表した、22年12月の消費者信頼感指数(CCI )は59.12で、4カ月連続下降(悪化)し、13年ぶりに最低を更新した。

 同センターのCCIは、今後半年間の消費者マインド(楽観か悲観)に関するアンケート調査の結果を指数化したもの。0~200のうち「楽観」と「悲観」が各半数なら100で「中立」。1~100なら「悲観」、100~200なら「楽観」となる。22年は1回も100を超えなかった。

 6項目別では「国内物価水準」のみ「上昇」(改善)したが、「景況感」、「家計の状況」、「雇用情勢」、「耐久消費財の購入」「株式投資」は「下降」(悪化)した。

 台湾メディアの風伝媒によると、同センターの呉大任・執行長は「多くの国民がインフレの圧力を受けており、一般家庭が生活を現状維持するだけで、支出が増える」と指摘。「12月は『家計の状況』が70.9に下降し、2010年5月以降の最低となった」と述べた。

 23年は台湾の輸出と輸出受注の減少を、内需の大幅成長が打ち消すとの見方も出ているが、呉氏は「経済運営モデルからみて、この種の希望は実現しないだろう」と語った。

 企業も売り上げ減少に加えて資金調達コストが拡大し、正に内憂外患の状態。台湾電力の電気料金引き上げも泣きっ面にハチだ。今後、無給休暇や人員整理に乗り出す可能性が高い。CCIでも「雇用情勢」の指数は61.1で、過去13年で最低となった。

失業率は横ばいも人員整理のうわさ

 台湾経済の支柱であるITなどテック産業は、これまでの人手不足から一転、大規模な人員整理に踏み切るとの見方も出ている。米インテルやマイクロン、メタ(旧フェイスブック)に続き、中国IT機器大手、小米技術(シャオミ)の大規模な人員整理に踏み切る中、これら企業と取り引きする台湾企業が影響を受けるのは必至とみられている。

 今のところ台湾の失業率は落ち着いている。行政院主計総処(統計局)の発表によると、22年11月の失業率は3.61%で、前月比0.03ポイントの縮小。季節調整後の失業率は3.64%で、前月比で横ばいだった。

 台湾メディアの鏡週刊によると、台湾のパソコン大手、宏碁(エイサー)創業者で、経済に対する高い見識で知られる、施振栄(スタン・シー)氏は昨年12月27日、「台湾のテック業界は、まだ人手不足だ。人員整理を心配する必要はない」と述べた。

 一方、台湾紙・自由時報によると、電子機器の受託製造サービス(EMS)を手掛ける和碩聯合科技(ペガトロン)の童子賢会長は昨年11月、金利引き上げが、企業の資金不足を招いてテック業界の人員整理につながりかねないと指摘した。

 童子会長は「雇用の維持は企業の社会的責任。簡単に人員整理をしてはならない」とも語ったが、自戒のような言葉は厳しい現状を浮き彫りにしているように感じられる。


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