4年に1度の「祭り」が台湾で始まろうとしている。
投開票こそ2024年1月想定だが、総統選挙に向けた実際の選挙運動はすでに号砲が鳴っており、23年のうちに大勢は決するだろう。あるいは9、10月ごろにはほぼ定まっている可能性もある。台湾の総統選は波乱万丈だと思われがちだが、過去、終盤戦の大逆転というケースはあまりない。
結果はたいてい予想以上の差で先行者が勝利する。最後に態度未定の有権者が有利と思われる候補者に流れるからだ。20年、16年は民進党の蔡英文総統が大差で国民党候補を破った。12年、08年も国民党の馬英九総統が予想通り、民進党候補を下した。
唯一の例外は、04年の民進党・陳水扁総統の再選で、投票前日に陳水扁氏に打ち込まれた二発の銃弾で、劣勢と見られた陳水扁氏は僅差で再選を果たした。ただ、これはあくまでも例外で、「先行逃げ切り」が台湾選挙の基本的ルールである。
統一地方選で変わった風向き
もう一つのルールが「8年周期」だ。
2000年の国民党から民進党への政権交代以来、基本的に台湾の総統ポストは「民進党」→「国民党」→「民進党」へと二期8年おきに渡ってきた。国民党の超長期独裁体制の苦渋をなめてきた台湾の人々は、権力に対するバランス感覚を働かせる。常に政権与党に厳しい視線を注ぎ、権力の一極集中を忌避する傾向がある。
順番からすれば、国民党への政権交代となるはずなのだが、今回ばかりは8年ルールを破って民進党が継続して政権を担当するとの見方が、昨年11月の地方選前までは有力だった。
蔡英文政権は、政党支持率、政権支持率のどれをとっても、6年以上の長期政権を経たとは思えないほど好調な数字を残していた。一方、国民党の低迷感は深刻で、中国がバックにいるというネガティブなイメージも強かった。
民進党は寝ていても勝つ、という言い方すら耳にした。政治通たちの話題の中心は、事実上の総統決定を意味する民進党の総統候補に誰がなるかであり、国民党の勝利の可能性は話題にすらなっていなかった。
こうした民進党への楽観ムードを、一気に吹き飛ばしたのが、昨年11月の統一地方選だった。