台湾の統一地方選挙の投開票日が26日に迫っている。与党の民主進歩党(民進党)は苦戦を強いられており、野党の中国国民党(国民党)、台湾民衆党(民衆党)の勢いに押され気味だ。
2020年に歴史的大勝を遂げて再選を果たして以来、安定した政権運営を見せてきた民進党・蔡英文政権に何が起きているのか。そして、中国は、自らが敵視する民進党が苦境に追い込まれている選挙展開を、どう見ているのか。
注目選挙区でも支持拡大が難しい民進党
今週末、台湾は選挙前最後の週末とあって、各政党とも各地で選挙イベントを行った。蔡英文総統は各地の重要選挙区を回り、「民進党の候補者に入れることは、蔡英文を支持することだ」と呼びかけ、票の掘り起こしを目指した。
特に台北市では10万人規模の大型のパレードを開催。確かに追い上げは始まっているようだが、劣勢をどこまで挽回できるかといえば、見通しが明るいとはいえない。
同党の立法委員(国会議員)は「党中央の動きがやや遅すぎた。選挙民の熱気も今ひとつで、従来からの支持基盤を固めるだけで精一杯だ。一部の選挙区では追い上げても、最終的には追いつけないだろう」と語った。
統一地方選の勝敗の指標となるのは、6つの直轄市とその他の市・県あわせて22の地方トップを選ぶ首長選挙であり、現状の勢力図がどのように変わるのかがポイントだ。台湾では市・県のトップの権限が大きく、次の総統候補なども通常は地方選挙を勝ち抜いて上を目指していく仕組みがある。
現状では、22の市・県のトップのうち、14を国民党、7を民進党、1を民衆党が有している。前回選挙の18年は、国民党が大勝を収めた選挙だった。今回の選挙では、民進党がどこまでポストを取り戻すかが事前の注目点とされたが、現実には取り戻すどころか、現状の7以下に減らす可能性も生まれている。
最大の注目選挙区である台北市と桃園市(ともに直轄市)での苦戦が痛い。台北市で民進党は、コロナ対策の英雄となった陳時中・元衛生福利部長を候補に立てた。本来ならば抜群の知名度で少なくとも接戦に持ち込めると思われていたが、国民党の候補であり、初代総統、蒋介石総統のひ孫、蒋万安氏にリードを許している。現在の民衆党の台北市長・柯文哲氏が推している無所属の黃珊珊氏も善戦しており、民進党が期待していた「中間選挙民」と呼ばれる、特定の強い支持政党を持たない都市住民の浮動票を陳時中氏は引きつけるに至っていない。