11月 26日に行われた台湾の統一地方選挙で民進党が大敗したことにつき、11月30日付のTaipei Times社説は、地方選挙と国政選挙は必ずしも関係はないとしつつ、2024年の総統選挙への示唆を解説している。
11月26日の地方選挙での民進党の敗北は、蔡英文総統の指導中間試験における失敗、国民党と台湾民衆党への追い風と解釈され、2024年の総統選挙がより接戦になることを示唆している。
地方選挙は必ずしも国政選挙に大きな影響を及ぼすものではないが、今回の結果が2024 年の選挙戦をより厳しくすることは確実だ。
蔡は民進党大敗の責任を取り党主席を辞任したが、敗北の理由として一つには、候補者のほとんどが予備選挙ではなく党指導部から直接指名されたという、団結を害したとみられる戦略上の欠陥のためだ。蔡は選挙を中国の敵対性に対抗する手段と位置づけていたが、地方選挙では有権者はインフレやコロナ規制といった国内問題により焦点を当てる傾向がある。しかし、今回の結果は、再び両岸問題が最重要課題となる2024年に必ずしも大きな影響を及ぼすとは限らない。国民党は2018年の地方選挙で圧勝したが、2020年の総統選挙で敗北した。
今回の投票率は歴史的低さだった。6つの直轄市では59%と、2020年の75%、2018年の69.9%を大きく下回った。地方選挙には無関心な人が多いが、通常、総統選挙への意欲の方が高い。
一方、憲法改正国民投票で投票年齢の引き下げに失敗したことは、改正を主張した民進党が、それを達成できなかったことを意味し、若者への投票権の拡大が実現できなかったことは、2024年に重大な要因となり得る。
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11月末に投開票が行われた台湾の統一地方選挙において、蔡英文総統の民進党は県・市長のポストを7から5に減らした。他方、国民党は現有の14のポストのうち13を獲得し、第3党の民衆党は現有通り1 人を獲得し、その他無党派の2人が当選した。
今回の地方選挙の結果は、蔡民進党政権の対中国関係や対米関係のような対外関係についての評価というより、同政権の内政面の実績を如何に評価するかに起因したものと思われる。国民党の現職県・市長の再選が多かったことのみならず、新型コロナ対策への不満、インフレなど日常の経済政策への不満等がその背後にあるというのがTaipei Timesの社説の見方である。
特に、今回の地方選挙では、民進党候補者のほとんどが、予備選挙ではなく、党指導部から指名され、そのまま立候補して団結を乱すという戦略的誤りをおかしたとTaipei Timesは指摘している。
この統一地方選挙は4年ごとに実施される国政選挙の中間の年に実施される。通常、地方選挙後に台湾の政党は、次期総統選挙に向けて動きを本格化させる。そのことを、Taipei Times社説は、「今回の選挙結果は、両岸問題が再び最重要問題となる2024年には必ずしも大きな影響を与えるものではないかもしれない。国民党は2018年に地方選挙で大勝したにもかかわらず、2020年の総統選挙で敗北した」とも述べている。
今回、選挙結果の敗北の責任を取って、蔡英文は民進党主席を直ちに辞任するとして、「中央政権としてはこのような結果に直面し、深刻に検討すべき点は多い。……国民の信頼に応えるよう努力しなければならない」旨述べ、強い反省の意を表わした。