今回の統一地方選挙の結果が、基本的に台湾の内政に起因するものとしても、中国は、民進党の「台湾独立路線」に反対する人々の民意が選挙結果に表れたなどと「情報戦」、「心理戦」を仕掛けてくる可能性がある。
場合によっては、武力侵攻の可能性を匂わせつつも、同時に、蔡政権との間で当面途絶えている交流、対話を復活しよう大々的に呼びかけることもあるかもしれない。かつて、中国が対台湾政策として使用していた「入島、入戸、入脳」(島に入り、家に入り、頭に入る)の可能性を台湾の人々は十分に警戒しなければならないだろう。
次世代担う民進党の頼清徳と国民党の蒋万安
蔡英文政権の副総統である頼清徳は最近南太平洋のパラオを公式訪問した。パラオ訪問中に「中華民国台湾」の呼称を多数用いたことが注目されていた頼氏は「蔡英文総統は『中華民国台湾』を用いて台湾民衆の力を結集させ、国内のアイデンティティ問題を解決しようと試みてきたし、国際社会もこれを肯定している」と述べた。頼氏は「現状維持」を追求する蔡英文政権の中台関係を引き継ぐことを公言したことは、2024年の総統選挙へ向けた民進党内部の一つの新たな動きとして注目される。
蒋介石の第4代目の孫にあたる蒋万安が、国民党員として立候補し、首都・台北の市長に当選したが、台北市長は、陳水扁(民進党)、馬英九(国民党)総統が就任したことのある有力市長である。次回総統選挙にはタイミングは合わないが、長い目で見て蒋の台北市長当選は台湾政治における今後の波乱要因の一つとして注目されることとなりそうである。