2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月16日

 イギリスが日本の失われた20年と同じ轍を踏まない限り、2020年台の公的債務はGDP比で1948年の半分以下にとどまるだろう。そうであれば名目GDP4%の成長とし、プライマリーバランスをプラス2%、長期の実質金利を2%程度にすれば良い。この推論で行けば成長により債務問題から逃れるのは可能である。

 最大の危険は実質GDPの急激な減少で、それは、住宅価格を急落させ、失業率を増加させ、デフレに陥り、金融危機のスパイラルを招くかもしれない。そうなると、分子の公的債務は大きくなり、分母の名目GDPは小さくなる。これを打ち消すのは金利の引き下げだが、日本の経験が示すように、長びく財政赤字やデフレの悪影響を超低金利によって免れる事は出来ない。

 継続的な力強い成長こそが解法であり、それによってインフレを張り子の虎にすることが出来るのだ、と論じています。

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 本論説には、欧州は財政均衡のために緊縮財政を敷いており、これが更に成長の足を引っ張っている、というウォルフの問題意識が根底にあります。継続的な力強い成長こそが、公的債務問題の解法であり、これによりインフレはマネージ可能な範囲に抑えこむことが出来る、それはイギリスの歴史が証明している、というのがウォルフの主張です。

 デフレによる財政悪化は、日本の失われた20年が証明していますが、一方でインフレに対する警戒論は根強いものがあります。アベノミクスに対しても、インフレが抑制できなくなるのではないかとの懐疑論が見られます。しかし、ウォルフの理論では、成長戦略という第三の矢が効果を発揮することで大きな問題にはならない、ということになります。逆に、成長戦略が失速するようなことがあれば、アベノミクスは破綻することになってしまいます。

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