2024年7月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月18日

 スタントンは、スパイ事件の増加は、台湾の過小な防衛支出の下での、軍事規律の低下が原因であろう、と述べている。運用中の残りの2隻の潜水艦は、博物館入りすべきような代物であるし、F-5戦闘機は、明らかに安全性に問題がある。馬は、より強い軍を望んでいるように言っているが、米国の主張にもかかわらず、台湾の国防支出を、2011年の対GDP比2.2%から3%に高めることができずにいる。軍隊の完全志願制への移行はうまくいっておらず、予算の問題に直面している。その結果、米のアジア回帰にとって、台湾がどれほど信頼できる安全保障上のパートナーたり得るのか、疑問を持ち始めている専門家もいる。

 台湾は、フィリピンの沿岸警備艇などよりもはるかに大きな脅威、中国に直面している。台湾がやるべきことは、本来は友好的なマニラとの確執を深めるのではなく、自国の経済的および軍事的基盤の修復である、と論じています。

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 保守正統路線の論説であり、全く賛成ですが、冷戦終了後のクリントン、ブッシュ、そして現在のオバマ政権が取っている態度は異なっています。いずれの政権も、台湾が独立を宣言して東アジアの安定を乱すことを何よりも心配し、当面は、台湾が独立宣言を抑えて、両岸関係を安定させることを支持し、そして、長期的には、明言しているわけではありませんが、いずれは両岸が経済的、そして平和的、政治的に統一されて台湾問題が軟着陸することを期待する態度を仄めかして来ました。そして、残念ながら、現在のオバマ第二期政権では、最近固まったその構成員の考え方から言って、このような路線を変える見通しは無いと思われます。

 そこまでは、中国にとって、外交的勝利です。そして、2008年の台湾国民党政権成立以来、その成果を固めようとして、両岸間の経済的な交流と相互依存度の増大を大いに促進し、機会を見ては政治的対話も進展させようとしているのが、現在の中国の政策です。

 これに対して、保守正統路線としては、このような状況の中で、台湾自身が、将来に向けて敗北主義に陥り、中国の言いなりになっていくことを最も憂慮しているわけです。論説の筆者もそうなのでしょう。

 ただ、一縷の、というよりも、有力な希望は、米議会の態度です。1998年に、ビル・クリントンが訪中して三つのNOを約束した時に、帰国早々、ほとんど全会一致でそれを拒否したのは議会でした。そして、2年前の2011年6月の公聴会では、新聞が“Fear not, Taiwan. The Congress is here.”(台湾よ恐れるな、議会ここにあり。)と見出しに掲げるぐらい、親台湾派の意向が表明されています。

 自由民主国である台湾が、共産党一党支配の中国に併呑されることなどは、米国の伝統的民意を表明する議会としては、到底受け入れることはできません。

 また、中台関係の強化は中国の高度成長を背景に行われていましたが、中国の経済成長自身に陰りが出てきた状況も否定できません。経済はしょせん両側の利益の問題ですから、利益が減れば、相互依存度も減少する可能性があります。台湾が、次の総統選挙までの3年間を、中国の希望する政治的進展なしで耐えることが期待されます。

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